埼玉県の郷土料理

各地の郷土料理

埼玉県の代表的な郷土料理を3つご紹介します。それぞれの郷土料理について、文化的・歴史的な背景、レシピ、一般の人が作る場合のコツ、地元での食べ方、おすすめの店、食レポ的な説明をまとめました。

1. 肉汁うどん

文化的・歴史的な背景

肉汁うどんは、埼玉県北部、特に秩父地方や県央地域を中心に古くから親しまれてきた郷土料理です。そのルーツは、江戸時代に農作業の合間の食事として食べられていた、手打ちの太いうどんに、豚肉やネギが入った温かい汁につけて食べるという、シンプルながらも力強い料理に遡ります。

埼玉県は、小麦の栽培が盛んな地域であり、良質な小麦粉を使ったうどん作りが盛んでした。農家では、自分たちで育てた小麦を製粉し、手打ちうどんを日常的に食べていました。肉汁うどんは、そんな生活の中で自然と生まれた、地域に根付いた食文化と言えるでしょう。

レシピ

【うどん】

  1. 強力粉と中力粉を混ぜ合わせ、塩水を少しずつ加えながら捏ねます。
  2. 生地がまとまったら、しっかりと踏んでコシを出します。
  3. 生地を丸めて濡れ布巾をかけ、1時間程度寝かせます。
  4. 寝かせた生地を麺棒で均一に伸ばし、幅広に切ります。
  5. たっぷりの沸騰したお湯でうどんを茹でます。
  6. 茹で上がったうどんは、冷水でしっかりと洗い、水気を切ります。

【肉汁】

  1. 豚バラ肉または豚肩ロース肉を薄切りにします。
  2. 長ネギを斜め切りにします。
  3. 鍋にだし汁(かつおだしや昆布だし)、醤油、みりん、砂糖を入れて火にかけます。
  4. 沸騰したら豚肉を加え、アクを取りながら煮込みます。
  5. 豚肉に火が通ったら、長ネギを加えてさっと煮ます。

一般の人が作る場合のコツ

  • うどんは、手打ちが難しければ、市販の太めのうどんを使用しても美味しく作れます。
  • うどんを茹でる際は、たっぷりの湯で茹で、茹で上がったらすぐに冷水で締めることで、コシのあるうどんに仕上がります。
  • 肉汁は、豚肉から出る旨味をしっかりと引き出すために、丁寧にアクを取りながら煮込むことがポイントです。
  • ネギは、煮込みすぎると風味が飛んでしまうので、最後にさっと加える程度にしましょう。

地元での食べ方

肉汁うどんは、熱々の肉汁に冷たいまたは温かい(釜揚げ)うどんをつけて食べるのが一般的です。薬味として、刻みネギや七味唐辛子などが添えられます。地元では、家庭料理としてはもちろん、多くのうどん専門店で提供されており、それぞれのお店が独自の肉汁やうどんにこだわっています。

おすすめの店

  • 「藤店うどん」(ふじだなうどん):埼玉県内に複数店舗を展開する有名店。武蔵野うどんの代表的なお店で、コシの強いうどんと濃厚な肉汁が特徴です。
  • 「久兵衛屋」(きゅうべいや):埼玉県を中心に展開するうどん・そばチェーン店。手頃な価格で肉汁うどんを楽しめます。
  • 「甚五郎」(じんごろう):秩父地方で人気のうどん店。手打ちの太うどんと、きのこ汁や天ぷらも評判です。

食レポ

藤店うどんの肉汁うどんは、まずその力強いコシに驚かされます。噛むほどに小麦の風味が広がり、喉越しも抜群です。熱々の肉汁は、豚肉の旨味とネギの甘みが溶け合い、濃厚ながらもどこか懐かしい味わいです。冷たいうどんを熱い肉汁につけて啜ると、口の中で絶妙な温度差と風味が広がり、食欲をそそります。薬味のネギや七味唐辛子を加えることで、味の変化も楽しめます。

2. 焼き団子

文化的・歴史的な背景

焼き団子は、埼玉県全域で親しまれている定番のおやつであり、祭りや縁日などでもよく見かけるソウルフードです。うるち米の粉で作った団子を串に刺し、甘辛い醤油ベースのタレを塗って焼き上げた、シンプルながらも奥深い味わいが特徴です。

埼玉県は、米どころとしても知られており、米粉を使った様々な食文化が育まれてきました。焼き団子は、そんな米の恵みを活かした、素朴で庶民的なおやつとして、長年にわたり県民に愛されてきました。各地域や家庭によって、タレの甘さや団子の形、焼き加減などに微妙な違いがあるのも特徴です。

レシピ

  1. うるち米の粉に水を少しずつ加えながら捏ね、耳たぶくらいの柔らかさの生地を作ります。
  2. 生地を適量ずつ丸めて団子にし、蒸し器で15分程度蒸します。
  3. 蒸し上がった団子を冷ましてから、3~5個ずつ串に刺します。
  4. 醤油、みりん、砂糖を鍋に入れて火にかけ、とろみがつくまで煮詰めてタレを作ります。
  5. 串に刺した団子を、オーブントースターやグリル、または炭火で焼き色がつくまで焼きます。
  6. 焼き上がった団子に、温かいタレをたっぷりと塗っていただきます。

一般の人が作る場合のコツ

  • 団子を作る際、熱湯で粉を捏ねる「湯捏ね」にすると、よりモチモチとした食感になります。
  • 団子を蒸すことで、均一に火が通り、焼きムラを防ぐことができます。
  • タレは、焦げ付かないように弱火でじっくりと煮詰めることがポイントです。
  • 焼き加減はお好みで調整してください。焦げ目がつくくらい焼くと香ばしさが増します。

地元での食べ方

焼き団子は、おやつとしてはもちろん、お祭りや縁日での定番の食べ歩きグルメです。地元では、スーパーマーケットや和菓子店などでも手軽に購入できます。温かいお茶と一緒にいただくのが一般的です。

おすすめの店

  • 「山田屋」:川越市にある老舗の和菓子店。昔ながらの製法で作られた焼き団子は、素朴ながらも深い味わいです。
  • 「熊谷うちわ祭」などの祭りや縁日:多くの屋台で焼き団子が販売され、賑わいを見せます。
  • 地域のスーパーマーケットや和菓子店:日常的に焼き団子を購入できます。

食レポ

山田屋の焼き団子は、まずその香ばしい焼き目に食欲をそそられます。一口食べると、もっちりとした団子の食感と、甘辛い醤油ダレの風味が口いっぱいに広がります。焦げ付いたタレの香ばしさと、団子の優しい甘さが絶妙なバランスで、どこか懐かしい味わいです。シンプルながらも、素材の良さと丁寧な仕事が感じられる一品です。

3. ゼリーフライ

文化的・歴史的な背景

ゼリーフライは、埼玉県行田市周辺の郷土料理で、小判型のコロッケのような見た目をしていますが、ジャガイモではなく、おからと野菜を混ぜて揚げたものです。名前の由来は、形が小判(銭)に似ていることから「銭フライ」と呼ばれ、それが訛って「ゼリーフライ」になったと言われています。

明治時代から大正時代にかけて、行田市周辺で繊維業が盛んだった頃、安価で栄養価の高い食べ物として、労働者たちの間で広まったとされています。おからを主原料としているため、ヘルシーでありながら腹持ちも良く、当時の人々の貴重なエネルギー源となっていました。

レシピ

  1. おからを炒って水分を飛ばします。
  2. 茹でて潰したジャガイモ(つなぎ程度)、刻んだネギ、ニンジンなどの野菜を加えます。
  3. 塩、胡椒などで味を調えます。
  4. よく混ぜ合わせ、小判型に成形します。
  5. 小麦粉、溶き卵、パン粉の順に衣をつけます。
  6. 中温の油で、きつね色になるまで揚げます。
  7. 揚げたてのゼリーフライに、ウスターソースや中濃ソースなどをかけていただきます。

一般の人が作る場合のコツ

  • おからは、炒って水分を飛ばすことで、まとまりやすくなり、揚げた際にサクサクとした食感になります。
  • ジャガイモは、入れすぎるとおからの風味が薄れてしまうので、つなぎ程度に少量加えるのがポイントです。
  • 衣をつける際は、しっかりと押さえることで、剥がれにくくなります。
  • 揚げ油の温度が高すぎると、焦げ付きやすいので注意しましょう。

地元での食べ方

ゼリーフライは、行田市周辺の惣菜店や精肉店、イベントの屋台などでよく見かけます。地元では、おやつやお弁当のおかずとして親しまれており、揚げたてにソースをかけて食べるのが一般的です。

おすすめの店

  • 「かねつき堂本舗」:行田市にある老舗のゼリーフライ専門店。創業以来変わらない製法で作られたゼリーフライは、地元の人々に愛されています。
  • 行田市内の惣菜店や精肉店:多くの店で手作りのゼリーフライを購入できます。
  • 「忍城址」周辺の店舗:観光客向けにゼリーフライを提供するお店もあります。

食レポ

かねつき堂本舗のゼリーフライは、外はサクサク、中はふっくらとした独特の食感が楽しめます。おからの素朴な風味と、野菜の優しい甘みが口の中に広がり、どこか懐かしい味わいです。ウスターソースの酸味と風味が、ゼリーフライの美味しさを引き立てます。見た目はコロッケのようですが、食べてみると全く違う、ヘルシーで優しい味わいが魅力です。

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