長野県の代表的な郷土料理を3つご紹介します。豊かな自然と歴史が育んだ、それぞれの料理の文化的・歴史的な背景、レシピ、一般の人が作る場合のコツ、地元での食べ方、おすすめの店、そして食レポ的な説明をまとめました。
1. おやき

文化的・歴史的な背景
おやきは、長野県全域で古くから親しまれてきた郷土食です。小麦粉やそば粉などを練って作った皮で、野菜やきのこ、あんこなどの具材を包み、焼いたり蒸したりして作られます。その起源は定かではありませんが、米が貴重だった時代に、米の代わりとなる保存食として作られたと考えられています。農作業の合間の軽食や、冬場の保存食として、各家庭で独自の味が受け継がれてきました。地域によって皮の材料や厚さ、具材の種類、調理法が異なり、バラエティ豊かなおやきが存在するのが特徴です。
レシピ(代表的な野菜ミックスおやき)
材料(約10個分)
- 皮:
- 小麦粉(中力粉) 200g
- ベーキングパウダー 小さじ1/2
- 砂糖 小さじ1
- 塩 ひとつまみ
- 水 120ml
- サラダ油 大さじ1
- 具材:
- 野沢菜漬け 200g(細かく刻んで水気を絞る)
- なす 1本(5mm角に切る)
- しめじ 1/2株(ほぐす)
- 油揚げ 1/2枚(細かく刻む)
- ごま油 大さじ1
- 醤油 大さじ1
- みりん 大さじ1
- 砂糖 小さじ1/2
- 七味唐辛子 お好みで
作り方
- 皮を作る: ボウルに小麦粉、ベーキングパウダー、砂糖、塩を混ぜ合わせます。水を少しずつ加えながら混ぜ、まとまってきたらサラダ油を加えてさらに混ぜ、滑らかな生地にします。
- 生地を10等分にし、丸めて濡らした布巾をかけて15分ほど休ませます。
- 具材を作る: フライパンにごま油を熱し、なすとしめじを炒めます。しんなりしたら野沢菜漬け、油揚げを加え、醤油、みりん、砂糖で調味し、お好みで七味唐辛子を加えます。水分がなくなるまで炒め、冷まします。
- 包む: 休ませた生地を手のひらで薄く円状に広げ、中央に具材を乗せます。生地の端を中央に集めてしっかりと閉じ、平らにならします。
- 焼く: フライパンに油をひき、中火で両面に焼き色がつくまで焼きます。焦げ付きそうになったら弱火にします。または、蒸し器で15分ほど蒸しても美味しくいただけます。
一般の人が作る場合のコツ
- 皮の生地は、水分量を調整しながら耳たぶくらいの柔らかさにすると扱いやすいです。
- 具材は、水分が多いと包みにくいので、しっかりと炒めて水分を飛ばしましょう。
- 皮を閉じるときは、破れないように丁寧に、しっかりと閉じることが重要です。
- 焼き加減は、焦げ付かないように火加減を調整しましょう。
地元での食べ方
おやきは、朝食、昼食、おやつなど、様々なシーンで食べられます。温かいまま食べるのが一般的ですが、冷めても美味しくいただけます。地域によっては、囲炉裏の灰の中で焼いたり、蒸したりと、独自の調理法があります。お土産としても人気が高く、様々な種類のものが販売されています。
おすすめの店
- 「いろは堂」:長野県内に複数店舗を展開するおやきの有名店。定番の野沢菜をはじめ、様々な種類の具材のおやきが楽しめます。
- 「小川の庄 大門店」:囲炉裏でじっくりと焼き上げた、香ばしいおやきが味わえます。
- 「信州おやき本舗」:手作りのおやきが種類豊富に揃っています。
食レポ
いろは堂の野沢菜おやきは、もっちりとした皮の中に、シャキシャキとした野沢菜の塩気と風味が絶妙にマッチしています。ごま油の香りが食欲をそそり、素朴ながらも奥深い味わいです。小川の庄の囲炉裏焼きおやきは、外はカリッと、中はふっくらとしており、香ばしい風味がたまりません。
2. 信州そば

文化的・歴史的な背景
信州そばは、長野県で生産されるそば粉を使ったそばの総称です。冷涼な気候と水はけの良い土地がそばの栽培に適しており、古くから良質なそばが生産されてきました。江戸時代には、信州のそばは「戸隠そば」「開田そば」「木曽そば」など、地域ごとに特色を持つようになり、全国的にその名が知られるようになりました。そばは、長野県民の日常食としてだけでなく、お祝いの席などでも欠かせない存在です。
レシピ(かけそば)
材料(1人分)
- そば(乾麺) 100g
- だし汁 300ml(かつお節、昆布)
- 醤油 大さじ2
- みりん 大さじ1
- 砂糖 小さじ1/2
- ネギ(小口切り) 適量
- 七味唐辛子 お好みで
作り方
- 鍋にたっぷりの湯を沸かし、そばを茹でます。茹で時間は、商品の表示に従ってください。
- 茹で上がったそばを冷水で ভালোভাবে洗い、ぬめりを取ります。
- 別の鍋にだし汁、醤油、みりん、砂糖を入れて火にかけ、温めます。
- 器にそばを盛り付け、温めたつゆをかけ、ネギを散らし、お好みで七味唐辛子を添えていただきます。
一般の人が作る場合のコツ
- そばは、たっぷりの沸騰したお湯で茹でることが重要です。
- 茹で上がったそばは、冷水でしっかりと洗い、ぬめりを取ることで、コシのある美味しいそばになります。
- つゆは、だしを丁寧にとることで、風味豊かな味わいになります。市販のつゆを使う場合は、少し手を加える(みりんや醤油を加えるなど)と、より美味しくなります。
地元での食べ方
信州そばは、温かいかけそばやかけうどんはもちろん、冷たいざるそばやもりそばで食べるのが一般的です。薬味には、ネギ、わさび、海苔などが添えられます。そばつゆは、地域によって濃さや甘さが異なります。また、山菜そばやきのこそばなど、地元の食材を使った variations も豊富です。
おすすめの店
- 「戸隠そば 山本屋」:戸隠そばの老舗。コシの強いそばと、独特のつゆが特徴です。
- 「手打ちそば こばやし」:地元産のそば粉を使った、風味豊かな手打ちそばが味わえます。
- 「草笛」:県内に複数店舗を展開するそばの人気店。ボリュームのあるそばがリーズナブルに楽しめます。
食レポ
戸隠そば山本屋のざるそばは、口にした瞬間に広がるそばの香りが素晴らしいです。強いコシとつるつるとした喉越しで、あっという間に食べ終わってしまいます。濃いめのつゆが、そばの風味をさらに引き立てます。手打ちそばこばやしの天ぷらそばは、揚げたての熱々天ぷらと、香り高い手打ちそばの組み合わせが絶妙です。
3. いなごの佃煮

文化的・歴史的な背景
いなごの佃煮は、長野県をはじめとする内陸部の地域で、古くから食べられてきた伝統的な保存食です。かつては貴重なタンパク源であり、農村部を中心に広く食されていました。近年では、食文化の変化や農薬の使用などにより、いなごの収穫量が減少し、食べる機会も少なくなってきましたが、今でも郷土の味として親しまれています。独特の風味と食感があり、ご飯のお供やお酒の肴として珍重されています。
レシピ(一般的な作り方)
材料
- いなご(生または冷凍) 200g
- 醤油 大さじ3
- みりん 大さじ3
- 砂糖 大さじ2
- 酒 大さじ1
- 生姜(薄切り) 少量
作り方
- いなごは、よく洗い、水気を切ります。生きたまま調理する場合は、熱湯で茹でてから水気を切ります。
- 鍋に醤油、みりん、砂糖、酒、生姜を入れ、火にかけます。
- 煮立ったら、いなごを加え、落とし蓋をして弱火でじっくりと煮詰めます。
- 煮汁がほとんどなくなり、照りが出てきたら火を止め、冷まします。
一般の人が作る場合のコツ
- いなごは、新鮮なものを使うのが一番ですが、入手が難しい場合は冷凍のものを使用しても構いません。
- 生きたまま調理する場合は、必ず熱湯でしっかりと茹でてから調理しましょう。
- 煮詰める際は、焦げ付かないように火加減に注意し、時々混ぜてください。
- 甘さや醤油の濃さは、お好みで調整してください。
地元での食べ方
いなごの佃煮は、主に白いご飯のお供として食べられます。また、お酒の肴としても人気があります。独特の風味と食感は、一度食べると忘れられないという人もいます。近年では、お土産物としても販売されており、観光客にも珍しい郷土の味として注目されています。
おすすめの店
いなごの佃煮は、主に道の駅やお土産物店などで販売されています。専門の飲食店は少ないですが、郷土料理店などで提供している場合があります。
- 道の駅 信州新町:地元産のいなごを使った佃煮が販売されています。
- お土産物店:長野県内の主要な観光地のお土産物店で見つけることができます。
- 郷土料理店:一部の郷土料理店で、珍味として提供している場合があります。
食レポ
いなごの佃煮は、見た目は少し抵抗があるかもしれませんが、口に入れると香ばしい風味が広がります。カリッとした食感と、噛むほどに出てくる独特の旨みが特徴です。甘辛い味付けがご飯によく合い、ついつい箸が進んでしまいます。お酒の肴としても、その珍しさから話のタネになること間違いなしです。