新潟県の代表的な郷土料理を3つご紹介します。それぞれの郷土料理について、文化的・歴史的な背景、レシピ、一般の人が作る場合のコツ、地元での食べ方、おすすめの店、食レポ的な説明をまとめました。
1. へぎそば

文化的・歴史的な背景
へぎそばは、新潟県魚沼地方(小千谷市、十日町市など)発祥の郷土料理で、「へぎ」と呼ばれる木製の浅い器に、一口大に丸めて盛り付けられたそばです。一般的なそば粉に布海苔(ふのり)という海藻をつなぎとして使用しているため、独特のつるりとした滑らかな舌触りと、強いコシが特徴です。
その歴史は江戸時代に遡ると言われています。魚沼地方は、かつて麻織物の産地として栄え、布海苔は麻糸の糊付けに使われていました。その布海苔をそばのつなぎとして利用したのが、へぎそばの始まりとされています。麻織物産業の発展とともに、へぎそばも地域に根付き、独特の食文化を形成してきました。
レシピ
- そば粉(8割)と布海苔(2割)を混ぜ合わせ、水を少しずつ加えながらこねます。
- まとまってきたら、力を入れてしっかりとこね、生地を滑らかにします。
- 生地を麺棒で薄く均一に伸ばします。
- 包丁で細く切り、そばの麺を作ります。
- たっぷりの熱湯でそばを茹でます。
- 茹で上がったそばを冷水でしっかりと洗い、ぬめりを取り除きます。
- 「へぎ」と呼ばれる器に、一口大に丸めて盛り付けます。
- 薬味(ネギ、わさびなど)とつゆ(醤油ベースにだしを加えたもの)を用意し、いただきます。
一般の人が作る場合のコツ
- 布海苔は、つなぎとして重要な役割を果たしますが、入手が難しい場合は、山芋などを少量加えても、ある程度滑らかな食感を出すことができます。
- そば生地は、しっかりとこねることで、コシのある麺になります。
- 茹で時間は、そばの太さによって調整してください。茹ですぎるとコシがなくなるので注意が必要です。
- 茹で上がったそばは、冷水で手早く冷やし、しっかりとぬめりを取り除くことが、美味しさの秘訣です。
地元での食べ方
へぎそばは、地元では蕎麦屋で食べるのが一般的です。家族や友人と大勢で囲み、大きなへぎに盛られたそばを分け合って食べる光景もよく見られます。つゆは、比較的あっさりとした醤油ベースのものが多く、薬味にはネギとわさびが定番です。
おすすめの店
- 「わたや」:小千谷市に本店を構える老舗のへぎそば専門店。布海苔の風味と強いコシが特徴です。
- 「角屋」:十日町市にあるへぎそばの名店。創業から変わらない伝統の味を守り続けています。
- 「小嶋屋総本店」:新潟県内に広く展開するへぎそばのチェーン店。手軽に本格的なへぎそばを楽しめます。
食レポ
へぎそばは、口にした瞬間のつるりとした滑らかさと、噛むほどに感じられる強いコシが印象的なそばです。布海苔独特の磯の香りがほんのり漂い、一般的なそばとは一線を画す上品な味わいです。あっさりとしたつゆとの相性も抜群で、何枚でも食べられるほど後を引きます。
2. のっぺ

文化的・歴史的な背景
のっぺは、新潟県全域で広く食べられている郷土料理で、里芋、人参、ごぼう、鶏肉、きのこ、こんにゃくなどを、醤油ベースの出汁でとろみをつけながら煮込んだものです。地域や家庭によって具材や味付けが異なり、お正月やお盆などの行事食として、また日常的なおかずとしても親しまれています。
その起源は、江戸時代の精進料理にあると言われています。当時は、肉の代わりに豆腐や野菜を使い、とろみをつけた煮物が作られていました。明治時代以降、鶏肉などが加えられるようになり、現在のような形になったと考えられています。名前の由来は、「とろりとした」という意味の古語「のっぺらぼう」から来ているという説があります。
レシピ
- 里芋は皮をむき、大きめに切って下茹でします。
- 人参、ごぼうは皮をむき、乱切りにします。
- 鶏もも肉は一口大に切ります。
- しめじ、えのきなどのきのこは石づきを取り、食べやすい大きさにします。
- こんにゃくは下茹でし、手綱こんにゃくにするか、食べやすい大きさに切ります。
- 鍋にだし汁(昆布やかつお節)を入れ、鶏肉、人参、ごぼうを煮ます。
- 火が通ったら、里芋、きのこ、こんにゃくを加えます。
- 醤油、みりん、酒、砂糖などで味を調えます。
- 水溶き片栗粉でとろみをつけます。
- 仕上げに、刻んだネギやせりを散らしていただきます。
一般の人が作る場合のコツ
- 里芋は、下茹ですることで煮崩れを防ぎ、アクを取り除くことができます。
- 鶏肉は、最初に炒めてから煮込むと、香ばしさが増します。
- とろみ加減は、お好みで調整してください。
- 仕上げに、銀杏やゆり根などを加えると、上品な味わいになります。
地元での食べ方
のっぺは、温かいまま食べるのが一般的ですが、冷やして食べる家庭もあります。お正月やお盆などの行事食としては、大きな鍋にたっぷりと作り、家族や親戚が集まって食べるのが定番です。日常的には、ご飯のおかずとして、またお酒の肴としても親しまれています。
おすすめの店
- 「やすね」:新潟市にある郷土料理店。地元の食材をふんだんに使った、滋味深いのっぺが味わえます。
- 「古町どんどん」:新潟市の古町にある居酒屋。家庭的な味わいののっぺが楽しめます。
- 「新潟ふるさと村」:新潟県の特産品が集まる施設内の食事処で、様々な種類ののっぺを味わうことができます。
食レポ
のっぺは、とろりとした優しい口当たりと、様々な食材の旨みが溶け込んだ、滋味深い味わいの煮物です。里芋のほっくりとした食感、人参やごぼうの土の香り、鶏肉のコク、きのこの風味などが絶妙に調和しています。冷めても美味しく、どこか懐かしい、家庭の味を感じさせる一品です。
3. 栃尾の油揚げ

文化的・歴史的な背景
栃尾の油揚げは、新潟県長岡市栃尾地域発祥の油揚げで、一般的な油揚げの数倍もの大きさがあるのが特徴です。厚みがあり、外はカリッと、中はふっくらとした独特の食感が楽しめます。
その歴史は江戸時代に遡ると言われています。栃尾地域は、かつて油の生産が盛んであり、その豊富な油を使って、大きく厚い油揚げが作られるようになったのが始まりとされています。豆腐を大きく揚げたものが、冷害などで米が不作だった時代の貴重なタンパク源となり、地域に根付いていきました。現在では、栃尾地域を代表する特産品として、全国的にも知られています。
レシピ(家庭で作る場合は簡略化)
- 木綿豆腐(水切りをしっかりとする)を大きめに切ります。
- 揚げ油を160℃と180℃の二段階に熱します。
- まず160℃の油でじっくりと揚げ、中まで火を通します(約10分)。
- 次に180℃の油で表面がきつね色になるまで揚げます(約2〜3分)。
- 油を切って、お好みの薬味(ネギ、醤油、七味唐辛子など)を添えていただきます。
一般の人が作る場合のコツ
- 大きな油揚げを作るのは家庭では難しいので、厚揚げを使っても、ある程度近い食感を出すことができます。
- 揚げる際は、温度管理が重要です。低温でじっくりと火を通し、高温で表面をカリッとさせることで、外はカリッと、中はふっくらとした仕上がりになります。
- 揚げ油は、新しいものを使うと、風味が良くなります。
地元での食べ方
栃尾の油揚げは、焼いてそのまま食べるのが最も一般的です。表面をカリッと焼き、醤油やネギ、七味唐辛子などのシンプルな薬味でいただきます。また、煮物や味噌汁の具材としても使われます。栃尾地域には、油揚げ専門店が多くあり、様々な種類の油揚げ料理を楽しむことができます。
おすすめの店
- 「山本豆腐店」:栃尾地域を代表する老舗の油揚げ専門店。揚げたての熱々をその場で食べるのがおすすめです。
- 「佐藤豆腐店」:こちらも栃尾で人気の油揚げ専門店。様々な種類の油揚げを取り扱っています。
- 「道の駅R290とちお」:栃尾地域の特産品が集まる施設で、揚げたての油揚げや油揚げを使った料理を味わうことができます。
食レポ
栃尾の油揚げは、一般的な油揚げとは全く異なる、その大きさと食感に驚かされます。外側のカリッとした香ばしさと、内側のふっくらとした豆腐の優しい味わいが絶妙なコントラストを生み出しています。噛むほどに大豆の風味が広がり、シンプルながらも奥深い美味しさです。熱々にかぶりつけば、至福のひとときを味わえます。