石川県の代表的な郷土料理を3つご紹介します。それぞれの郷土料理について、文化的・歴史的な背景、レシピ、一般の人が作る場合のコツ、地元での食べ方、おすすめの店、食レポ的な説明をまとめました。
1. 治部煮(じぶに)

文化的・歴史的な背景
治部煮は、石川県金沢市の代表的な郷土料理で、鶏肉(または鴨肉)、すだれ麩、里芋、人参、椎茸などを醤油ベースの出汁で煮込んだものです。その名前の由来には諸説あり、「じぶじぶ」と煮る音からきたという説、豊臣秀吉の家臣である岡部治部右衛門が考案したという説などがあります。江戸時代にはすでに存在していた記録があり、武家料理として発展し、やがて庶民にも広まったと考えられています。とろみをつけた出汁と、それぞれの食材の風味が調和した、上品な味わいが特徴です。
レシピ
- 鶏もも肉(または鴨肉)は一口大に切り、薄力粉をまぶします。
- すだれ麩は水で戻し、食べやすい大きさに切ります。
- 里芋は皮をむき、下茹でします。
- 人参は乱切り、椎茸は軸を取り薄切りにします。
- 鍋にだし汁(昆布とかつお節)、醤油、みりん、砂糖を入れ、火にかけます。
- 鶏肉を入れ、火が通ったら里芋、人参、椎茸を加えます。
- 最後にすだれ麩を加え、味が染み込むまで煮込みます。
- 水溶き片栗粉でとろみをつけ、お好みでわさびを添えていただきます。
一般の人が作る場合のコツ
- 鶏肉に薄力粉をまぶすことで、煮汁にとろみがつき、味がよく絡みます。
- すだれ麩は煮崩れしやすいので、最後の方に加えてください。
- 里芋は下茹ですることで、煮込み時間の短縮と煮崩れ防止になります。
- 出汁の濃さや甘さは、お好みで調整してください。
- 仕上げに加えるわさびは、風味のアクセントになります。
地元での食べ方
治部煮は、家庭料理としてはもちろん、料亭や郷土料理店などで広く提供されています。お正月やお祝いの席など、特別な日に食べられることも多いです。ご飯のおかずとしてはもちろん、お酒の肴としても親しまれています。
おすすめの店
- 「つば甚」:創業170年以上の老舗料亭で、伝統的な治部煮を味わえます。
- 「金澤料亭 壽屋」:風格ある佇まいの料亭で、上品な治部煮が楽しめます。
- 「郷土料理 じわもん」:地元食材を使った、手作りの温かい治部煮が味わえます。
食レポ
治部煮は、とろりとした醤油ベースの出汁が、鶏肉や野菜、麩にしっかりと染み込んだ、滋味深い味わいの煮物です。鶏肉の旨みと、すだれ麩の独特の食感、そしてそれぞれの野菜の風味が口の中で優しく広がります。最後に添えられたわさびのピリッとした刺激が、全体の味を引き締め、上品ながらも奥深い味わいです。
2. かぶら寿し

文化的・歴史的な背景
かぶら寿しは、石川県の冬を代表する郷土料理で、蕪(かぶら)に塩漬けした鰤(ぶり)を挟み、米麹で漬け込んだものです。江戸時代から伝わる保存食で、雪深い冬を越すための知恵として生まれました。蕪の甘みと鰤の旨み、そして米麹の風味が絶妙に調和した、独特の味わいが特徴です。正月料理としても欠かせない一品です。
レシピ
- 蕪は皮をむき、厚さ1cm程度の輪切りにします。大きい場合は半月切りにします。
- 蕪に塩を振り、重石をして一晩置き、水分を抜きます。
- 鰤は薄切りにし、軽く塩を振っておきます。
- 米麹、砂糖、塩、酒を混ぜ合わせ、麹床を作ります。
- 容器に蕪、鰤、麹床を交互に重ねて詰めます。
- 重石をして、冷蔵庫で1週間から10日ほど漬け込みます。
- 蕪がしんなりとし、酸味が出てきたら食べ頃です。
一般の人が作る場合のコツ
- 蕪はしっかりと塩漬けすることで、水分が抜け、味が染み込みやすくなります。
- 鰤は新鮮なものを使用してください。
- 麹床の塩分濃度や砂糖の量は、お好みで調整してください。
- 漬け込む期間は、気温によって調整してください。
- 保存する際は、冷蔵庫で保存し、早めに食べきるようにしましょう。
地元での食べ方
かぶら寿しは、冬の食卓に欠かせない一品です。家庭で作られるのはもちろん、スーパーやデパートなどでも手軽に購入できます。お正月料理として、家族や親戚が集まる際に食べられることが多いです。日本酒との相性も抜群です。
おすすめの店
- 「四十萬谷本舗」:創業180年以上の老舗で、伝統的な製法のかぶら寿しを販売しています。
- 「高木屋」:上品な味わいのかぶら寿しが人気です。
- 「金沢ふくら屋」:様々な種類の糀漬けを販売しており、かぶら寿しも人気商品です。
食レポ
かぶら寿しは、蕪のシャキシャキとした食感と、鰤の凝縮された旨みが、米麹の優しい甘さと酸味によって引き立てられた、独特の風味を持つ漬物です。口に入れた瞬間の蕪の爽やかな甘さと、後からくる鰤の濃厚な味わいが絶妙に調和し、発酵食品ならではの奥深い風味が楽しめます。冬の寒さを忘れさせてくれる、滋味深い一品です。
3. ハントンライス
文化的・歴史的な背景
ハントンライスは、石川県金沢市発祥の洋食で、バターライスの上に白身魚のフライ(主にカジキマグロやタラ)を乗せ、ケチャップとホワイトソースをかけたものです。1960年代後半から1970年代にかけて、金沢市内のレストランで考案されたと言われています。「ハン」はハンガリー、「トン」はフランス語でマグロを意味する「thon」に由来するという説が有力です。手軽さとボリューム感から、地元の人々に長く愛されているソウルフードです。
レシピ
- ご飯にバターと塩胡椒を混ぜ、バターライスを作ります。
- 白身魚(カジキマグロやタラなど)は食べやすい大きさに切り、塩胡椒、小麦粉、卵、パン粉の順に衣をつけ、油で揚げます。
- ケチャップとマヨネーズを混ぜ合わせ、オーロラソースを作ります(お好みで)。
- 皿にバターライスを盛り付け、その上に白身魚のフライを乗せます。
- フライにケチャップとホワイトソースをかけ、お好みでパセリのみじん切りを散らしていただきます。
一般の人が作る場合のコツ
- バターライスは、バターを焦がさないように弱火で炒めるのがポイントです。
- 白身魚のフライは、揚げすぎると硬くなるので、火が通ったらすぐに取り出しましょう。
- ホワイトソースは、市販のものを使っても手軽に作れます。
- ケチャップとホワイトソースの量は、お好みで調整してください。
- 卵やエビフライなどをトッピングするのもおすすめです。
地元での食べ方
ハントンライスは、主に洋食店や喫茶店で提供されています。ランチや軽食として、地元の人々に親しまれています。店によって、ソースの種類やトッピングが異なるため、食べ歩きも楽しめます。
おすすめの店
- 「グリルオーツカ」:ハントンライスの元祖と言われる老舗洋食店で、創業以来変わらない味を守り続けています。
- 「キッチンユキ」:ボリューム満点のハントンライスが人気です。
- 「ターバン」:地元で長く愛される喫茶店で、懐かしい味わいのハントンライスが楽しめます。
食レポ
ハントンライスは、バターの風味豊かなライスと、サクサクに揚げられた白身魚のフライに、甘酸っぱいケチャップとまろやかなホワイトソースが絶妙に絡み合った、どこか懐かしい味わいの洋食です。ボリュームがあるので、お腹いっぱいになりたい時にもぴったりです。子供から大人まで、幅広い世代に愛される、金沢ならではのソウルフードです。