滋賀県の郷土料理

各地の郷土料理

滋賀県の代表的な郷土料理を3つご紹介します。琵琶湖の恵みと豊かな自然が育んだ、滋賀ならではの味わいを深掘りしていきます。

1. 鮒ずし

文化的・歴史的な背景

鮒ずしは、琵琶湖固有のニゴロブナを塩と米で漬け込んで発酵させた、日本最古の寿司とも言われる伝統的な保存食です。その歴史は古く、奈良時代には朝廷への献上品として記録が残っています。琵琶湖周辺では、貴重なタンパク源として、また冬場の保存食として各家庭で作られてきました。独特の強い香りと酸味が特徴で、好き嫌いが分かれるものの、滋賀県民にとっては故郷の味として深く根付いています。

レシピ(家庭で作る簡易版)

本格的な鮒ずしは数ヶ月から数年かけて発酵させるため、家庭で作るのは非常に困難です。ここでは、鮒の風味を少し味わえる簡易的なレシピを紹介します。

  1. 材料:
    • 琵琶湖産フナ(小型のものがおすすめ):2〜3匹
    • 塩:フナの重量の15〜20%
    • 米:フナが完全に浸る程度
    • 米麹:米の1/3〜1/4程度
    • 日本酒:少量
  2. 下処理: フナは丁寧に洗い、内臓とエラを取り除く。水気をよく拭き取る。
  3. 塩漬け: フナに塩を擦り込み、重石をして1週間ほど冷蔵庫で塩漬けにする。途中、出てきた水分を捨てる。
  4. 本漬け: 塩漬けしたフナを取り出し、水で軽く塩を洗い流し、水気をよく拭き取る。
  5. 炊いたご飯を人肌に冷まし、米麹と日本酒を混ぜ合わせる。
  6. 清潔な容器に、ご飯と米麹を混ぜたものを敷き詰め、その上にフナを並べる。さらにご飯と米麹を混ぜたものでフナを覆う。
  7. 重石をして、涼しい場所で1ヶ月ほど保管する(あくまで簡易的な発酵です)。

一般の人が作る場合のコツ

  • 完全に発酵させるのは難しいため、上記のレシピは鮒の風味を少し楽しむ程度と考えてください。
  • 衛生管理に十分注意してください。
  • 生のフナの入手が難しい場合は、塩漬けのフナを利用する方法もあります。
  • 本格的な鮒ずしは、専門店で購入するのがおすすめです。

地元での食べ方

鮒ずしは、薄くスライスしてそのまま食べるのが一般的です。日本酒の肴として珍重され、お茶漬けに入れる食べ方もあります。独特の風味に慣れると、その奥深い味わいに魅了される人も少なくありません。

おすすめの店

  • 「魚治」:創業から200年以上続く老舗。伝統的な製法を守り続けています。
  • 「近江今津 西友」:地元で愛される鮒ずし専門店。様々な種類の鮒ずしを取り扱っています。
  • 「木村水産」:琵琶湖の幸を扱う専門店。鮒ずしも品質が高いと評判です。

食レポ

一口食べると、まず鼻を突く強烈な発酵臭が広がります。しかし、その後に訪れるのは、濃厚な魚の旨味と米の甘み、そして独特の酸味のハーモニー。ねっとりとした身の食感と、時折感じる骨の食感もアクセントになります。まさに「珍味」という言葉がぴったりの、滋賀ならではの奥深い味わいです。

2. 鴨肉の治部煮(じぶに)

文化的・歴史的な背景

鴨肉の治部煮は、滋賀県全域で広く食べられているわけではありませんが、特に琵琶湖周辺の地域で親しまれている郷土料理です。その名前の由来は諸説あり、「じぶじぶ」と煮る音からきたという説や、安土桃山時代に織田信長の家臣であった武将・治部少輔(石田三成)が考案したという説などがあります。鴨肉の旨味と、とろみをつけた醤油ベースの出汁が特徴で、冷えた体を温める滋味深い一品です。

レシピ

  1. 材料:
    • 鴨肉(もも肉またはむね肉):200g
    • 里芋:2個
    • 人参:1/2本
    • ごぼう:1/2本
    • 生椎茸:3〜4個
    • 絹ごし豆腐:1/2丁
    • 麩(小町麩など):適量
    • だし汁:400ml
    • 醤油:大さじ3
    • みりん:大さじ3
    • 砂糖:大さじ1
    • 酒:大さじ2
    • 片栗粉:大さじ1.5
    • 水:大さじ2
    • 柚子の皮(千切り):少々
  2. 下準備: 鴨肉は食べやすい大きさに切る。里芋、人参、ごぼうは乱切りにする。生椎茸は軸を取り、笠を半分に切る。豆腐は水切りして食べやすい大きさに切る。麩は水で戻しておく。片栗粉と水を混ぜて水溶き片栗粉を作る。
  3. 煮る: 鍋にだし汁、醤油、みりん、砂糖、酒を入れて火にかける。沸騰したら鴨肉を加え、アクを取りながら煮る。
  4. 里芋、人参、ごぼうを加え、柔らかくなるまで煮る。
  5. 生椎茸、豆腐、麩を加え、ひと煮立ちさせる。
  6. 水溶き片栗粉を回し入れ、とろみをつける。
  7. 器に盛り付け、柚子の皮を散らす。

一般の人が作る場合のコツ

  • 鴨肉は、火を通しすぎると硬くなるので注意しましょう。
  • 野菜は、お好みのものに変えても構いません。
  • 片栗粉でとろみをつけることで、味が染み込みやすくなり、体も温まります。
  • 仕上げに柚子の皮を加えることで、風味が増し、上品な味わいになります。

地元での食べ方

鴨肉の治部煮は、家庭料理としてはもちろん、料亭や割烹などでも提供されます。特に冬場には、温かい煮物として人気があります。ご飯のおかずとしてはもちろん、日本酒の肴としてもよく合います。

おすすめの店

  • 「近江源氏 ますや」:琵琶湖の幸と郷土料理を提供する老舗。鴨肉の治部煮も丁寧に作られています。
  • 「湖畔の宿 びわこ緑水亭」:落ち着いた雰囲気の中で、地元の食材を使った料理を楽しめます。
  • 「京料理 藤よし」:京料理の技法を取り入れた、上品な味わいの鴨肉の治部煮が味わえます。

食レポ

熱々の煮汁を一口飲むと、鴨肉の濃厚な旨味と醤油の香ばしさが口いっぱいに広がります。とろみがついているため、体がじんわりと温まります。柔らかく煮込まれた鴨肉は、噛むほどに深い味わいが楽しめます。里芋や人参などの野菜も出汁がしっかりと染み込み、滋味深い味わいです。麩の優しい食感も良いアクセントになっています。

3. 焼き鯖そうめん

文化的・歴史的な背景

焼き鯖そうめんは、長浜市周辺の湖北地域で古くから親しまれている郷土料理です。琵琶湖で獲れた鯖を焼いてほぐし、甘辛く煮付けたものを、茹でたそうめんに乗せて食べるのが特徴です。かつて、琵琶湖で獲れた鯖は、京都へ運ばれる重要な食材であり、その名残として、湖北地域では鯖を使った料理が根付いています。焼き鯖の香ばしさと、そうめんのつるつるとした食感が絶妙にマッチした、湖北ならではの味わいです。

レシピ

  1. 材料:
    • 鯖(塩鯖):1尾
    • そうめん:2〜3束
    • だし汁:400ml
    • 醤油:大さじ3
    • みりん:大さじ3
    • 砂糖:大さじ2
    • 生姜(薄切り):少々
    • ネギ(小口切り):適量
    • ごま油:少量
  2. 鯖の準備: 鯖はグリルまたはフライパンで焼き、骨を取り除いてほぐしておく。
  3. 煮汁を作る: 鍋にだし汁、醤油、みりん、砂糖、生姜を入れて火にかける。沸騰したらほぐした鯖を加え、汁気が少なくなるまで煮詰める。
  4. そうめんを茹でる: そうめんはたっぷりの湯で茹で、冷水で洗い、水気をよく切る。
  5. 盛り付け: 器にそうめんを盛り付け、上から煮詰めた焼き鯖を乗せ、ネギを散らし、お好みでごま油を少量かける。

一般の人が作る場合のコツ

  • 鯖は、生の鯖を使う場合は塩を振ってしばらく置き、臭みを取ってから焼きましょう。塩鯖を使う場合は、塩分があるので醤油などの調味料の量を調整してください。
  • 鯖を煮詰める際は、焦げ付かないように注意しながら、汁気がなくなるまでじっくりと煮込みましょう。
  • そうめんは、茹ですぎると食感が悪くなるので、表示時間通りに茹でましょう。
  • 仕上げにごま油を少量かけると、風味が豊かになります。

地元での食べ方

焼き鯖そうめんは、家庭料理としてはもちろん、長浜市周辺の飲食店や道の駅などで提供されています。特に夏の暑い時期には、つるつるとしたそうめんが食欲をそそります。

おすすめの店

  • 「翼果楼」:明治時代創業の老舗。伝統的な焼き鯖そうめんを味わえます。
  • 「鮎茶屋かわせ」:琵琶湖の幸と焼き鯖そうめんを楽しめる食事処。
  • 「道の駅 湖北みずどりステーション」:地元産の食材を使った焼き鯖そうめんが手軽に味わえます。

食レポ

香ばしく焼かれた鯖の風味が食欲をそそります。甘辛く煮付けられた鯖は、ほろほろと崩れ、そうめんとよく絡みます。つるつるとしたそうめんの喉越しと、鯖の濃厚な旨味が口の中で一体となり、シンプルながらも奥深い味わいです。ネギのシャキシャキとした食感と、ごま油の風味が良いアクセントになっています。

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