三重県の代表的な郷土料理を3つご紹介します。豊かな自然と歴史が育んだ、それぞれの料理について、文化的・歴史的な背景、レシピ、一般の人が作る場合のコツ、地元での食べ方、おすすめの店、食レポ的な説明をまとめました。
1. 伊勢うどん

文化的・歴史的な背景
伊勢うどんは、三重県伊勢市周辺で江戸時代から親しまれてきたとされる、太くて柔らかい麺と、たまり醤油ベースの濃厚なタレが特徴のうどんです。その起源には諸説あり、伊勢神宮への参拝客をもてなすために作られたという説や、農作業の合間に手早く食べられるように工夫されたという説などがあります。一般的なうどんと異なり、麺を長時間茹でることで独特の柔らかさを生み出し、濃厚なタレがその風味を引き立てます。地元では、老若男女問わず愛されるソウルフードです。
レシピ
- 麺: 伊勢うどん用の太麺(乾麺または生麺)を用意します。
- タレ:
- たまり醤油:大さじ3
- 砂糖:大さじ2
- みりん:大さじ2
- だし汁(昆布やかつお節):大さじ3
- (お好みで)ネギの青い部分、生姜の薄切り
- 薬味: 刻みネギ
作り方:
- たっぷりの湯で伊勢うどんの麺を、パッケージの指示より長めに(15~20分程度)茹でます。これにより、独特の柔らかい食感が生まれます。
- 麺が茹で上がったら、ザルにあげてしっかりと湯切りをします。
- 小鍋にタレの材料を入れ、中火でひと煮立ちさせます。お好みでネギの青い部分や生姜の薄切りを加えて風味を移し、煮詰めて少しとろみがついたら火を止め、漉します。
- 器に茹でた麺を盛り付け、温かいタレをかけます。
- 刻みネギをたっぷりと散らしていただきます。
一般の人が作る場合のコツ
- 麺の茹で加減: 伊勢うどんの最も重要なポイントはその柔らかさです。一般的なうどんよりも長めに茹でることで、もちもちとした独特の食感になります。茹で時間を調整してお好みの柔らかさにしてください。
- タレの調整: タレはたまり醤油がベースなので、味が濃く感じられるかもしれません。だし汁の量を調整したり、砂糖やみりんの量を微調整してお好みの甘辛さにしてください。
- 麺を冷水で締めない: 一般的なうどんと異なり、伊勢うどんは茹で上がった麺を冷水で締めません。温かいままタレと絡めて食べるのが特徴です。
地元での食べ方
地元では、茹でたての熱々のもちもち麺に、温かい濃厚なタレを絡めて、シンプルに刻みネギをかけたものが定番です。お店によっては、生卵を落としたり、天かすを添えたりするバリエーションもあります。朝食や昼食として、手軽に食べられる日常食として親しまれています。
おすすめの店
- 「山口屋」:創業150年以上の老舗。地元で長年愛される伊勢うどんの代表的なお店です。
- 「つたや」:こちらも老舗の一つ。独特の柔らかい麺と濃厚なタレが特徴です。
- 「勢乃國屋」:伊勢神宮内宮前にお店を構え、参拝客にも人気です。
食レポ
伊勢うどんは、見た目は黒く濃厚なタレに覆われていますが、口に運ぶと意外にもまろやかで、たまり醤油の深い旨みとほんのりとした甘さが広がります。何よりも特徴的なのは、その驚くほど柔らかい麺。つるつると喉越しが良いというよりは、もちもちとしていて、タレがしっかりと絡みつきます。刻みネギのシャキシャキとした食感がアクセントとなり、シンプルながらも奥深い味わいです。一口食べると、その独特の食感と風味が忘れられなくなる、まさに伊勢のソウルフードです。
2. 手こね寿司

文化的・歴史的な背景
手こね寿司は、三重県志摩地方の漁師料理として生まれたとされる郷土料理です。漁に出た漁師たちが、獲れたての新鮮な魚を船上で手軽に、そして美味しく食べるために考案されました。酢飯に、醤油やみりんなどで漬け込んだ新鮮な魚の切り身を豪快に混ぜ合わせたもので、その名の通り、「手でこねて」作られたことが由来とされています。現在では、志摩地方を中心に、三重県を代表する郷土料理として広く親しまれています。
レシピ
- 酢飯:
- 米:2合
- 昆布:5cm角1枚
- 酢:大さじ4
- 砂糖:大さじ2
- 塩:小さじ1
- 漬け魚:
- 新鮮な魚の刺身用切り身(マグロ、カツオ、タイ、アジなど):200g
- 醤油:大さじ3
- みりん:大さじ2
- 酒:大さじ1
- 生姜の薄切り:少々
- 薬味: 刻みネギ、大葉の千切り、ゴマ
作り方:
- 米を研ぎ、昆布と一緒にやや硬めに炊きます。
- 炊き上がったご飯に、混ぜ合わせた酢、砂糖、塩を熱いうちに加え、切るように混ぜて冷まします。
- 魚の切り身を、醤油、みりん、酒、生姜の薄切りを合わせた漬けダレに15分~30分程度漬け込みます。漬け時間は魚の種類や好みで調整してください。
- 冷ました酢飯に、漬け込んだ魚の切り身、刻みネギ、大葉の千切り、ゴマを加えて、しゃもじで切るように混ぜ合わせます。
- 器に盛り付けていただきます。
一般の人が作る場合のコツ
- 新鮮な魚を選ぶ: 手こね寿司の美味しさは、何と言っても新鮮な魚にかかっています。できるだけ新鮮な刺身用の魚を選びましょう。
- 漬けすぎに注意: 魚を漬けすぎると、味が濃くなりすぎたり、身が硬くなったりすることがあります。漬け時間は、魚の種類や切り身の厚さを見て調整してください。
- 酢飯の温度: 酢飯は、人肌くらいの温かさまで冷ましてから魚と混ぜ合わせると、魚の生臭みを抑えられます。
- 混ぜすぎない: 魚の身が崩れないように、しゃもじで切るように優しく混ぜ合わせるのがポイントです。
地元での食べ方
地元では、獲れたての新鮮な魚を使って、家庭や漁師料理店などで手軽に食べられています。様々な種類の魚を混ぜて作るのが一般的で、その日によって入る魚が変わるのも魅力の一つです。お祭りや祝い事など、人が集まる場でもよく作られます。
おすすめの店
- 「海女小屋体験施設 さとうみ庵」:現役の海女さんが営むお店で、新鮮な魚介を使った手こね寿司が楽しめます。
- 「すし久」:伊勢神宮外宮前にある老舗の寿司店。地元産の魚を使った手こね寿司が人気です。
- 「魚勘」:志摩地方に複数店舗を展開する魚介料理店。新鮮な魚介を使った手こね寿司が豊富です。
食レポ
手こね寿司は、口に入れた瞬間に新鮮な魚の旨みが広がる、まさに海の幸を凝縮したような味わいです。醤油ベースの漬けダレが魚の風味を引き立て、酢飯の酸味と絶妙にマッチします。様々な種類の魚の食感や味わいが一度に楽しめるのも魅力で、一口ごとに新しい発見があります。薬味のネギや大葉の爽やかな香りがアクセントとなり、後味もさっぱりとしています。豪快ながらも繊細な、志摩の漁師の粋を感じさせる一品です。
3. 鶏めし

文化的・歴史的な背景
鶏めしは、三重県津市周辺を中心に、古くから家庭料理として親しまれてきた炊き込みご飯です。鶏肉の旨みが染み込んだご飯は、素朴ながらも滋味深く、地元の人々にとって懐かしい味です。農村部などで、お祭りや集まりの際に作られることが多く、お弁当としてもよく利用されます。各家庭によって味付けや具材が少しずつ異なるのが特徴で、まさに「おふくろの味」と言えるでしょう。
レシピ
- 米: 2合
- 鶏もも肉: 150g(小さめの角切り)
- ごぼう: 1/2本(ささがき)
- 人参: 1/3本(細切り)
- しいたけ: 2枚(薄切り)
- だし汁(昆布やかつお節): 360ml
- 醤油: 大さじ3
- みりん: 大さじ2
- 酒: 大さじ1
- 砂糖: 小さじ1/2
- (お好みで)油揚げ: 1/2枚(細切り)
作り方:
- 米を研ぎ、通常の水加減より少し少なめの水で炊飯器にセットします。
- 鶏もも肉に軽く塩を振っておきます。
- ごぼうはささがきにして水にさらし、アクを抜きます。
- 人参、しいたけ、油揚げ(お好みで)を細切りにします。
- だし汁、醤油、みりん、酒、砂糖を混ぜ合わせます。
- 炊飯器に、鶏肉、ごぼう、人参、しいたけ、油揚げ(お好みで)を乗せ、混ぜ合わせた調味液を注ぎます。
- 通常通りに炊飯します。
- 炊き上がったら、全体を混ぜ合わせて、器に盛り付けていただきます。
一般の人が作る場合のコツ
- 鶏肉の下処理: 鶏肉を炒めてから炊き込むと、より香ばしく仕上がります。
- ごぼうのアク抜き: ごぼうはしっかりと水にさらしてアクを抜くことで、風味良く仕上がります。
- だし汁の調整: だし汁の量はお米の種類や炊飯器によって調整してください。
- 味付けの微調整: 醤油や砂糖の量はお好みで微調整してください。
地元での食べ方
地元では、家庭の食卓に日常的に登場するほか、お弁当やおにぎりの具材としても親しまれています。運動会や遠足など、人が集まる際の定番料理の一つです。シンプルながらも、鶏肉と野菜の旨みがご飯に染み込んでいて、飽きのこない味わいです。
おすすめの店
- 「津駅弁当」:駅弁として鶏めしを販売しており、手軽に本格的な味が楽しめます。
- 「かしわや」:鶏料理専門店で、鶏めしを定食などで提供しています。
- 地元の道の駅やスーパーのお惣菜コーナー:家庭の味に近い鶏めしが手軽に購入できます。
食レポ
鶏めしは、一口食べると鶏肉の香ばしい風味と、ごぼうやしいたけの素朴な香りが広がる、どこか懐かしい味わいの炊き込みご飯です。鶏肉の旨みがしっかりとご飯に染み込んでいて、シンプルながらも奥深い味わいです。それぞれの家庭で少しずつ味が違うのも魅力で、まさに「おふくろの味」を感じさせてくれます。お弁当にしても冷めても美味しく、日常的に食べたくなる、素朴で優しい味わいの郷土料理です。