熊本県の代表的な郷土料理を3つご紹介します。それぞれの郷土料理について、文化的・歴史的な背景、レシピ、一般の人が作る場合のコツ、地元での食べ方、おすすめの店、食レポ的な説明をまとめました。
1. 馬刺し

文化的・歴史的な背景
熊本県は、日本有数の馬肉の産地として知られ、馬刺しは県を代表する郷土料理の一つです。その歴史は古く、戦国時代に加藤清正公が兵糧として肥後(現在の熊本県)に馬を連れてきたことが始まりと言われています。当初は食用というよりも軍馬としての役割が大きかったのですが、時代が経つにつれて食用として広まりました。特に、熊本の温暖な気候と豊かな水源が、質の高い馬の育成に適しており、独特の臭みが少なく、甘みのある馬肉が育つと言われています。
レシピ
- 新鮮な馬肉(赤身、霜降り、たてがみなどお好みの部位)を用意します。
- 馬肉を冷蔵庫で十分に冷やし、薄切りにします。
- おろし生姜、おろしニンニク、ネギなどの薬味を用意します。
- 醤油や甘めの馬刺し専用醤油につけていただきます。
一般の人が作る場合のコツ
- 新鮮で質の良い馬肉を選ぶことが最も重要です。信頼できる精肉店で購入しましょう。
- 馬肉は必ず冷蔵庫で十分に冷やしてから切ると、綺麗に薄切りにできます。
- 切る際は、繊維を断ち切るようにすると、口当たりが良くなります。
- 薬味はお好みで用意しましょう。特に、熊本ではおろしニンニクと一緒に食べるのが一般的です。
- 生食なので、衛生管理には十分注意しましょう。
地元での食べ方
馬刺しは、熊本県内の多くの飲食店や居酒屋で提供されています。様々な部位を食べ比べることができ、それぞれ異なる食感と味わいを楽しむことができます。地元では、お酒の肴として楽しまれるのはもちろん、ご飯のおかずとしても親しまれています。また、お土産としても人気があります。
おすすめの店
食レポ
熊本の馬刺しは、口に入れた瞬間のとろけるような食感と、上品な甘みが特徴です。臭みがほとんどなく、まるで上質な赤身の牛肉のような味わいです。特に、霜降りの部位は、脂の甘みが口いっぱいに広がり、至福の味わいです。おろしニンニクと一緒に食べると、風味が引き締まり、より一層美味しくいただけます。部位によって食感や味が異なるので、食べ比べもおすすめです。
2. だご汁

文化的・歴史的な背景
だご汁は、熊本県全域で親しまれている郷土料理で、小麦粉を練って作った平たい団子(だご)と、豚肉や鶏肉、根菜などの野菜を味噌または醤油ベースの汁で煮込んだものです。農村部を中心に、古くから日常食として食べられてきました。「だご」という名前は、団子の方言に由来すると言われています。地域や家庭によって具材や味付けが異なり、それぞれの家庭の味があります。
レシピ
- 小麦粉に水を少しずつ加えながら練り、耳たぶくらいの柔らかさの生地を作ります。
- 生地を平たく伸ばし、手でちぎって「だご」を作ります。
- 豚肉または鶏肉を食べやすい大きさに切ります。
- 大根、人参、ごぼう、里芋などの根菜を食べやすい大きさに切ります。
- だし汁(いりこだしや昆布だしなど)を鍋に入れ、豚肉または鶏肉、根菜を煮ます。
- 野菜が柔らかくなったら、「だご」を加えて煮込みます。
- 味噌または醤油で味を調えます。
- 仕上げに、ネギや油揚げなどを加えても美味しくいただけます。
一般の人が作る場合のコツ
- 小麦粉を練る際は、水を一気に加えず、少しずつ加えて、生地の硬さを調整しましょう。
- 「だご」は、厚さや大きさを揃えなくても、手作りならではの素朴な味わいになります。
- 具材は、季節の野菜や冷蔵庫にあるものを活用できます。
- 味噌は、麦味噌を使うと、より熊本らしい味わいになります。
- 煮込むことで「だご」がとろみが出てくるので、汁の量を調整しましょう。
地元での食べ方
だご汁は、家庭料理として日常的に食べられています。また、食堂や郷土料理店などでも提供されており、ランチや定食としても人気があります。地域や家庭によって味が異なるため、食べ歩きも楽しめます。
おすすめの店
- だご汁茶寮 ここのつ:上品な鶏ダシのすましベースのだご汁が味わえる専門店です。
- 阿蘇庭 山見茶屋:阿蘇の郷土料理とともにだご汁を味わえます。
- 道の駅 阿蘇:阿蘇の食材をふんだんに使っただご汁を提供しています。
食レポ
だご汁は、「だご」のもちもちとした食感と、野菜や肉の旨味が溶け込んだ、素朴で温かい味わいの汁物です。味噌または醤油の風味が、食欲をそそります。特に、手作りの「だご」は、つるりとした喉越しで、食べ応えもあります。寒い季節には、体の芯から温まる、まさに故郷の味です。
3. 太平燕(タイピーエン)

文化的・歴史的な背景
太平燕は、熊本市を中心に親しまれている独特の麺料理で、豚骨スープをベースに、春雨、揚げ卵、エビ、イカ、野菜などを盛り付けたものです。そのルーツは、明治時代に中国福建省から熊本に渡ってきた華僑の陳平順氏が、故郷の料理をヒントに考案したと言われています。当時の日本にはなかった春雨を使った料理であり、独特の風味とヘルシーさから、地元の人々に受け入れられ、広まりました。
レシピ
- 豚骨スープを作ります(市販の豚骨スープの素を使っても可)。
- 春雨を茹でておきます。
- キャベツ、もやし、人参、ネギなどの野菜を食べやすい大きさに切ります。
- エビ、イカなどの魚介類を食べやすい大きさに切ります。
- 卵を揚げておきます。
- 豚骨スープを温め、野菜、魚介類を煮込みます。
- 茹でた春雨を加え、軽く煮込みます。
- 器に盛り付け、揚げ卵を乗せます。
- お好みで、紅生姜や胡椒などを添えていただきます。
一般の人が作る場合のコツ
- 豚骨スープは、時間をかけて丁寧に作ると、より本格的な味わいになりますが、市販のスープの素を使えば手軽に作れます。
- 春雨は、茹ですぎると食感が悪くなるので、表示時間通りに茹でましょう。
- 揚げ卵は、半熟に揚げると、黄身がスープに溶け出して美味しくなります。
- 具材は、お好みでアレンジできます。キクラゲや豚肉などを加えても良いでしょう。
- 最後にラー油を少し加えると、ピリ辛になり、食欲が増します。
地元での食べ方
太平燕は、熊本市内の多くの中華料理店や食堂で提供されています。ランチや夕食として人気があり、地元の人にとっては定番の麺料理です。店によってスープの味や具材が異なるため、食べ比べも楽しめます。
おすすめの店
- 紅蘭亭:1934年創業の老舗中華料理店で、太平燕発祥の店の一つとも言われています。
- 会楽園:こちらも太平燕発祥の店として知られる老舗中華料理店です。昭和8年創業。
- 中華旬菜 燕燕:本格的な四川料理から、熊本の食材を使った創作中華まで幅広いメニューが楽しめるお店です。
食レポ
太平燕は、豚骨スープのコクと、春雨のつるつるとした食感が絶妙にマッチした、独特の麺料理です。揚げ卵の香ばしさや、エビやイカの旨味、野菜のシャキシャキとした食感がアクセントになり、最後まで飽きずに楽しめます。ヘルシーでありながらも食べ応えがあり、熊本を訪れた際にはぜひ味わっていただきたい一品です。