愛媛県の代表的な郷土料理を3つご紹介します。温暖な気候と豊かな自然に育まれた愛媛ならではの味わいを、文化的・歴史的な背景、レシピ、一般の人が作る場合のコツ、地元での食べ方、おすすめの店、食レポ的な説明と共にお届けします。
1. 鯛めし(松山鯛めし)

文化的・歴史的な背景
愛媛県には、大きく分けて二種類の「鯛めし」が存在します。一つは、宇和島地方を中心とした、炊き込みご飯ではなく、熱いご飯に新鮮な鯛の刺身と特製のタレ、薬味をかけていただく「宇和島鯛めし」。そしてもう一つが、県庁所在地である松山市を中心とした、鯛の身をほぐしてご飯と一緒に炊き込む「松山鯛めし」です。
ここでご紹介するのは、より一般的に「愛媛の鯛めし」として知られ、家庭料理としても親しまれている「松山鯛めし」です。その起源は定かではありませんが、瀬戸内海で豊富に獲れる鯛を美味しく食べるための知恵として生まれたと考えられています。祝いの席やハレの日には欠かせない、地域に根付いた食文化です。
レシピ
- 下準備: 鯛(1尾、約500g)はウロコと内臓を取り、塩を振って30分ほど置きます。米(3合)は研いで水気を切っておきます。
- 鯛を焼く: 魚焼きグリルまたはオーブントースターで鯛の表面に焼き色がつくまで焼きます。こうすることで、香ばしさと旨味が引き出されます。
- 出汁を作る: 鍋に水(500ml)、昆布(5cm角1枚)、酒(大さじ2)、薄口醤油(大さじ3)、みりん(大さじ2)、塩(小さじ1/2)を入れて火にかけ、沸騰したら昆布を取り出します。
- 炊飯: 炊飯器に米と3の出汁を入れ、通常の水加減よりも少し少なめにします。焼いた鯛を丸ごと乗せて炊飯します。
- 仕上げ: 炊き上がったら鯛を取り出し、骨を取り除いて身をほぐし、ご飯に混ぜ込みます。お好みで刻みネギや三つ葉を散らしていただきます。
一般の人が作る場合のコツ
- 鯛は、生のまま炊き込むよりも、一度焼くことで生臭みが抑えられ、風味が増します。
- 出汁の味付けは、お好みで調整してください。薄口醤油を使うことで、ご飯の色がきれいに仕上がります。
- 鯛の代わりに、鯛のアラ(かぶとや中骨など)を使っても、良い出汁が出て美味しく作れます。その場合は、炊き上がったらアラを取り除き、身をほぐして混ぜ込みます。
- 炊飯器によっては焦げ付きやすい場合があるので、炊飯中に様子を見てください。
地元での食べ方
松山鯛めしは、家庭料理としてはもちろん、料亭や郷土料理店などで広く提供されています。お祝いの席や宴会などでもよく登場し、地元の人々にとっては日常的ながらも特別な料理です。
おすすめの店
- 「かどや」:松山市内に複数店舗を構える老舗。落ち着いた雰囲気で本格的な鯛めしを味わえます。
- 「鯛めし秋嘉」:新鮮な鯛を使った、こだわりの鯛めしが人気です。
- 「五志喜」:郷土料理の種類が豊富で、鯛めしと併せて愛媛の味を楽しめます。
食レポ
炊き立てのご飯に、ふっくらとした鯛の身の旨味がじんわりと染み渡り、口の中に優しい香りが広がります。上品な出汁の風味が、鯛本来の美味しさを引き立て、シンプルながらも奥深い味わいです。お米一粒一粒に鯛の旨味が凝縮されており、ついついおかわりをしてしまうほど。家庭で作る鯛めしは、どこか懐かしい、温かい味わいが魅力です。
2. 宇和島鯛めし

文化的・歴史的な背景
宇和島鯛めしは、南予地方、特に宇和島市を中心とした郷土料理で、炊き込みご飯である松山鯛めしとは全く異なる調理法が特徴です。その起源は、宇和海の豊かな漁場で獲れた新鮮な鯛を、漁師たちが手軽に、そして美味しく食べるための工夫から生まれたと言われています。生きた鯛の身を刺身にし、特製のタレと薬味でいただくこのスタイルは、鯛の鮮度の高さを物語っています。
レシピ
- 下準備: 新鮮な鯛の刺身(1人前あたり80~100g)を用意します。温かいご飯(1人前)を用意します。
- タレを作る: 卵(1個)を割りほぐし、醤油(大さじ2)、みりん(大さじ1)、出汁(大さじ1、昆布や鰹節でとったもの)、砂糖(小さじ1/2)、お好みで刻みネギ(適量)、ごま(適量)、ワサビ(少量)を加えてよく混ぜ合わせます。
- 盛り付け: 温かいご飯の上に、鯛の刺身を乗せ、2のタレをかけ、お好みで刻みネギやごま、ワサビを添えていただきます。
一般の人が作る場合のコツ
- 鯛は、とにかく新鮮なものを用意することが一番重要です。刺身用の柵を購入するのが手軽です。
- タレの味付けは、お好みで調整してください。甘めが好きな方は砂糖を少し多めに、出汁の風味を強くしたい場合は出汁の量を増やしてください。
- 卵は、生卵が苦手な場合は、温泉卵や半熟卵にしても美味しくいただけます。
- 薬味は、刻みネギの他に、ミョウガや大葉などを加えると、より風味豊かになります。
地元での食べ方
宇和島鯛めしは、宇和島市内の郷土料理店や旅館などで広く提供されています。ランチやディナーとしてだけでなく、祝いの席などでも供されることがあります。地元の人々は、新鮮な鯛の刺身をご飯に乗せ、豪快にタレをかけて味わいます。
おすすめの店
- 「かどや 宇和島本店」:宇和島鯛めしの名店として知られ、地元の人にも観光客にも人気です。
- 「ほづみ亭」:新鮮な鯛を使った、こだわりの宇和島鯛めしを落ち着いた空間で楽しめます。
- 「道の駅 みなとオアシスうわじま きさいや広場」内レストラン:手軽に宇和島鯛めしを味わえます。
食レポ
つやつやと光る新鮮な鯛の刺身は、口にした瞬間にとろけるような舌触りで、上品な甘みが広がります。濃厚ながらもさっぱりとした特製ダレと、薬味の風味が絶妙に絡み合い、温かいご飯との相性も抜群です。生卵を加えることで、全体がまろやかになり、さらに食欲をそそります。宇和島の海の恵みをダイレクトに感じられる、贅沢な一品です。
3. 鶏皮ぎょうざ

文化的・歴史的な背景
鶏皮ぎょうざは、今治市を中心とした東予地方の郷土料理として知られています。その発祥は、昭和30年代に、今治市内の焼き鳥店が、余った鶏皮を有効活用しようと、餃子の皮の代わりに鶏皮で餡を包んで揚げたのが始まりと言われています。独特の食感とジューシーな味わいが評判となり、地元の人々に愛されるソウルフードとなりました。
レシピ
- 下準備: 鶏もも肉(200g)は粗みじんにします。キャベツ(100g)はみじん切りにし、塩少々(分量外)を振ってしばらく置き、水気を絞ります。ニラ(30g)はみじん切りにします。ニンニク(1かけ)と生姜(ひとかけ)はすりおろします。
- 餡を作る: ボウルに鶏もも肉、キャベツ、ニラ、ニンニク、生姜、醤油(大さじ1)、酒(大さじ1)、ごま油(小さじ1)、片栗粉(大さじ1/2)、塩、胡椒(少々)を入れてよく混ぜ合わせます。
- 鶏皮で包む: 鶏皮(10枚程度)は、余分な脂を取り除き、広げます。2の餡を鶏皮で包みます。巻き終わりは、水溶き片栗粉(分量外)で止めると剥がれにくいです。
- 揚げる: 揚げ油を170℃に熱し、3の鶏皮ぎょうざをきつね色になるまで揚げます。
- 盛り付け: 油を切って、お好みでレモンやポン酢などを添えていただきます。
一般の人が作る場合のコツ
- 鶏皮は、スーパーなどで手に入りにくい場合は、焼き鳥店などで分けてもらうのも一つの方法です。
- 餡を作る際は、しっかりと混ぜ合わせることで、味が均一になり、まとまりやすくなります。
- 鶏皮で餡を包む際は、破れないように丁寧に作業しましょう。
- 揚げる温度が高すぎると、焦げ付きやすいので注意してください。
- 揚げ油の温度が低いと、ベタッとした仕上がりになるので、適温を保つことが重要です。
地元での食べ方
鶏皮ぎょうざは、今治市内の焼き鳥店や居酒屋などで広く提供されています。ビールのお供として親しまれており、地元の人々にとっては定番のメニューです。テイクアウトできる店も多く、家庭でも手軽に楽しめます。
食レポ
揚げたての鶏皮は、外はパリパリ、中はジューシーで、噛むほどに鶏肉の旨味と餡の風味が口いっぱいに広がります。鶏皮の香ばしさと、餡のニンニクや生姜の風味が食欲をそそり、ビールとの相性は抜群です。一般的な餃子とは異なる、独特の食感が楽しめる、今治ならではの逸品です。一口食べると、そのやみつきになる味わいに、手が止まらなくなること間違いなしです。