岐阜県の郷土料理

各地の郷土料理

岐阜県の代表的な郷土料理を3つご紹介します。それぞれの郷土料理について、文化的・歴史的な背景、レシピ、一般の人が作る場合のコツ、地元での食べ方、おすすめの店、食レポ的な説明をまとめました。

1. 鮎料理 (特に鮎の塩焼き)

文化的・歴史的な背景

岐阜県は、清流長良川をはじめとする豊かな河川に恵まれ、古くから鮎漁が盛んでした。特に長良川の鮎は、その香りの高さと上品な味わいで全国的に知られています。鮎は、縄文時代の遺跡からも発見されており、古くから人々の生活と深く結びついていたことが伺えます。江戸時代には、鮎は幕府への献上品としても珍重され、鵜飼漁とともに岐阜の重要な文化として発展してきました。鮎の塩焼きは、素材本来の味を最大限に引き出すシンプルな調理法であり、岐阜県民にとって夏の風物詩となっています。

レシピ (鮎の塩焼き)

  1. 新鮮な鮎を用意し、丁寧にぬめりを取り、ウロコを落とします。
  2. 背びれ、腹びれ、尾びれに化粧塩(多めの塩)をします。これは、焼き焦げを防ぎ、見た目を美しくするためです。
  3. 鮎全体に均一に塩を振ります。やや多めに振るのがコツです。
  4. 金串を頭から尾にかけて、身が反らないようにまっすぐに刺します。
  5. 炭火または魚焼きグリルでじっくりと焼きます。最初は強火で皮をパリッとさせ、中火でじっくりと火を通します。焼き加減は、背びれが焦げ付き、身に火が通って白っぽくなるのが目安です。
  6. 焼き上がったら、熱々をそのままいただきます。

一般の人が作る場合のコツ

  • 新鮮な鮎を選ぶことが最も重要です。目が澄んでいて、体に張りがあるものを選びましょう。
  • 塩は、焼く直前に均一に振るのがポイントです。
  • 家庭の魚焼きグリルを使う場合は、焦げ付きやすいので火加減を調整しながら焼きましょう。アルミホイルを敷くと焦げ付きを防げますが、皮のパリッとした食感が損なわれる可能性があります。
  • 串を刺す際は、内臓を傷つけないように注意しましょう。
  • 焼きすぎると身が硬くなるので、焼き加減を見ながら丁寧に焼きましょう。

地元での食べ方

鮎の塩焼きは、夏になると川沿いの料理店や観光施設などで提供されます。鵜飼見物の際に味わうのが特に風情があります。地元では、そのままかぶりつくのが一般的で、頭から尻尾まで余すことなく食べられます。内臓のほろ苦さもまた、鮎の醍醐味です。

おすすめの店

  • 「十八楼」 (岐阜市): 長良川沿いに佇む老舗旅館。鮎料理の種類も豊富で、伝統的な味わいが楽しめます。
  • 「川原町泉屋」 (岐阜市): 川原町の風情ある街並みの中にある食事処。炭火でじっくり焼かれた鮎の塩焼きは絶品です。
  • 「魚寅」 (郡上市): 清流吉田川のほとりにある料理店。新鮮な鮎を使った 다양한 料理が楽しめます。

食レポ

炭火でじっくりと焼かれた鮎は、皮はパリッと香ばしく、身はふっくらとしていて、口の中に広がる上品な香りがたまりません。淡白ながらも奥深い味わいは、まさに清流の恵みそのものです。頭から尻尾まで、骨まで香ばしく食べられ、特に内臓のほろ苦さが大人の味です。シンプルながらも素材の良さが際立つ、まさに日本の夏の味覚です。

2. 鶏ちゃん

文化的・歴史的な背景

鶏ちゃんは、主に岐阜県の中濃地域(下呂市、郡上市など)で親しまれている郷土料理で、鶏肉を味噌や醤油ベースのタレに漬け込み、キャベツや玉ねぎなどの野菜と一緒に鉄板で焼いて食べる豪快な料理です。そのルーツは、昭和30年代頃、養鶏が盛んだったこの地域で、安価な鶏肉をおいしく食べるために考案されたと言われています。各家庭や地域、お店によってタレの味付けが異なり、まさに「わが家の味」「地元の味」として親しまれています。手軽さとボリューム感から、地元の人々の日常食として、またバーベキューなどのアウトドア料理としても人気があります。

レシピ

  1. 鶏肉(もも肉やむね肉など、お好みで)を一口大に切ります。
  2. キャベツ、玉ねぎ、ピーマンなど、お好みの野菜を食べやすい大きさに切ります。
  3. 鶏ちゃん用のタレを作ります。味噌ベース、醤油ベースなど様々なレシピがありますが、一般的には味噌、醤油、みりん、酒、砂糖、ニンニク、生姜などを混ぜ合わせます。
  4. 切った鶏肉をタレに漬け込み、15分~30分ほど置きます。
  5. 熱した鉄板またはフライパンに油をひき、タレに漬け込んだ鶏肉と野菜を炒めます。
  6. 鶏肉に火が通り、野菜がしんなりしたら完成です。お好みで、唐辛子や一味唐辛子を加えても美味しいです。

一般の人が作る場合のコツ

  • 鶏肉は、漬け込むことで味が染み込み、より美味しくなります。
  • タレの味付けは、味噌と醤油の割合や、甘さ、辛さなど、お好みで調整しましょう。市販の鶏ちゃん用タレも手軽で便利です。
  • 野菜は、キャベツをたっぷりと入れるのがおすすめです。鶏肉の旨味を吸って美味しくなります。
  • 焦げ付きやすいので、火加減を調整しながら炒めましょう。
  • 最後に、うどんやご飯を加えて、タレと絡めて食べるのもおすすめです。

地元での食べ方

鶏ちゃんは、家庭の食卓はもちろん、地域のお祭りやイベント、キャンプなど、様々な場面で食べられます。鉄板を囲んで、みんなでワイワイと食べるのが醍醐味です。ご飯のおかずとしてはもちろん、ビールのおつまみとしても最適です。

おすすめの店

  • 「奥美濃古地鶏 ひるがの高原店」 (郡上市): 奥美濃古地鶏を使ったこだわりの鶏ちゃんが味わえます。
  • 「しげ吉」 (下呂市): 地元で長年愛される老舗の鶏ちゃん専門店。味噌ベースの濃厚なタレが人気です。
  • 「山田屋」 (郡上市): アットホームな雰囲気で、 様々な味付けの鶏ちゃんが楽しめます。

食レポ

鉄板でジュージューと焼かれた鶏ちゃんは、味噌や醤油の香ばしい香りが食欲をそそります。プリプリとした鶏肉の旨味と、タレの濃厚な味わいが絶妙に絡み合い、キャベツの甘みが良いアクセントになっています。ご飯が何杯でも進む、スタミナ満点の一品です。最後に残ったタレにご飯やうどんを絡めて食べるのも、また格別な美味しさです。

3. 朴葉味噌

文化的・歴史的な背景

朴葉味噌は、飛騨地方(高山市、飛騨市、白川村など)の山間部で古くから伝わる郷土料理で、朴の葉の上に味噌、ネギ、きのこなどの具材を乗せて焼きながら食べる料理です。朴の葉は、殺菌効果があり、香りも良いことから、食材を包んだり、食器の代わりに使われたりしてきました。朴葉味噌は、保存食である味噌を、山で採れるきのこなどの食材と組み合わせて、手軽においしく食べるための知恵から生まれたと考えられています。冬の寒い時期には、体を温める料理として、また、山仕事の合間の食事としても重宝されてきました。朴葉の香りが食欲をそそる、飛騨地方ならではの素朴で温かい味わいです。

レシピ

  1. 朴の葉を用意します。乾燥したものは水で戻しておきます。
  2. 味噌に、砂糖、みりん、酒などを混ぜ合わせ、お好みの味に調味します。
  3. ネギ、きのこ(しめじ、えのき、椎茸など)、油揚げなどを食べやすい大きさに切ります。
  4. 朴の葉の上に調味した味噌を広げ、その上に切った具材を乗せます。
  5. コンロまたは七輪などで、朴の葉をじっくりと焼きます。味噌がグツグツとして、香ばしい香りがしてきたら食べ頃です。
  6. 焼き上がった味噌と具材を、ご飯と一緒にいただきます。お好みで、卵黄を落としたり、山椒をかけたりしても美味しいです。

一般の人が作る場合のコツ

  • 朴の葉は、道の駅や物産館などで手に入れることができます。手に入らない場合は、アルミホイルを朴の葉の形に切って代用することもできますが、風味は劣ります。
  • 味噌は、お好みのものを使えますが、飛騨味噌を使うと、より本格的な味わいになります。
  • 具材は、きのこ類を多めにすると、山の風味が楽しめます。
  • 焦げ付きやすいので、火加減を調整しながら焼きましょう。
  • 朴の葉が焦げ付いてきたら、火から少し離すか、弱火でじっくりと焼くと良いでしょう。

地元での食べ方

朴葉味噌は、飛騨地方の旅館や食事処で、朝食や夕食によく提供されます。ご飯のお供としてはもちろん、お酒の肴としても人気があります。朴の葉の香りを楽しみながら、ゆっくりと味わうのが地元流です。

おすすめの店

  • 「飛騨物産館」 (高山市): 地元の食材を使った朴葉味噌焼きが手軽に楽しめます。お土産用の朴葉味噌も豊富です。
  • 「食事処 坂口屋」 (高山市): 落ち着いた雰囲気で、じっくりと焼き上げた朴葉味噌を味わえます。
  • 「民宿 大田屋」 (白川村): 囲炉裏を囲んでいただく朴葉味噌は、格別な味わいです。

食レポ

朴の葉が焼ける香ばしい香りが食欲をそそり、味噌の濃厚な旨味と、きのこの風味、ネギの甘みが絶妙に絡み合います。熱々を白いご飯と一緒に頬張ると、体の芯から温まります。朴の葉の独特の香りが、さらに食欲を増進させ、素朴ながらも滋味深い味わいは、まさに飛騨の里山の恵みを感じさせてくれます。

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