兵庫県の代表的な郷土料理を3つご紹介します。それぞれの郷土料理について、文化的・歴史的な背景、レシピ、一般の人が作る場合のコツ、地元での食べ方、おすすめの店、食レポ的な説明をまとめました。
1. 明石焼き (玉子焼き)

文化的・歴史的な背景
明石焼きは、兵庫県明石市発祥の郷土料理で、「玉子焼き」とも呼ばれます。江戸時代末期から明治初期にかけて、明石浦で盛んだったタコ漁の漁師たちが、タコを具材にした料理として考案したのが始まりと言われています。当時は「タコ焼き」と呼ばれていましたが、後に鶏卵をふんだんに使用するようになったため、「玉子焼き」と呼ばれるようになり、区別するために「明石焼き」という名称が広まりました。
特徴的なのは、小麦粉と鶏卵をベースにしたふわふわの生地でタコの切り身を包み、銅製の専用の焼き器で焼き上げること。そして、出汁につけて食べるという独特のスタイルです。
レシピ
材料 (約30個分)
- 卵:6個
- 薄力粉:100g
- 浮粉(または片栗粉):20g
- だし汁:600ml (昆布とかつお節)
- 塩:少々
- タコの茹でたもの:150g (1cm角に切る)
- 揚げ油:適量 (焼き器に塗る用)
出汁
- だし汁:500ml (昆布とかつお節)
- 薄口醤油:大さじ2
- みりん:大さじ1
- 塩:少々
作り方
- ボウルに卵を割り入れ、泡立て器でよく混ぜます。
- 薄力粉と浮粉(または片栗粉)を合わせてふるい入れ、ダマにならないようによく混ぜ合わせます。
- だし汁を少しずつ加えながら混ぜ合わせ、生地を作ります。塩で味を調えます。
- 明石焼き器を熱し、穴に薄く油を塗ります。
- 生地を穴の八分目まで流し込み、タコの切り身を各穴に1つずつ入れます。
- 生地が固まってきたら、竹串などでひっくり返しながら焼き色がつくまで焼きます。
- 出汁の材料を鍋に入れ、ひと煮立ちさせて冷まします。
- 焼きあがった明石焼きを出汁につけていただきます。
一般の人が作る場合のコツ
- 生地は、粉っぽさがなくなるまでしっかりと混ぜ合わせることが重要です。
- 浮粉がない場合は、片栗粉で代用できますが、浮粉を使うとよりふわふわとした食感になります。
- 焼き器はしっかりと温めてから油を塗ることで、生地がくっつきにくくなります。
- 火加減は中火で、焦げ付かないように注意しながら焼きましょう。
- 竹串を使い、生地がふっくらと膨らみ、焼き色がつけば完成です。
地元での食べ方
明石では、熱々の明石焼きを出汁につけて食べるのが一般的です。出汁は、昆布とかつお節の風味が豊かで、明石焼きの優しい味わいを引き立てます。地元では、おやつとしてはもちろん、軽食としても親しまれています。専門店では、出汁にネギや三つ葉などの薬味を入れて食べることもあります。
おすすめの店
- 「本家 きむらや」:明石焼きの老舗中の老舗。創業から変わらない伝統の味を守り続けています。
- 「たこ磯」:明石駅前にあり、アクセスも便利。いつも賑わっている人気店です。
- 「明石夢工房」:明石の食材を使った創作明石焼きも楽しめます。
食レポ
明石焼きは、口に入れた瞬間に広がる優しい卵の風味と、ふわふわとした食感がたまらない一品です。熱々を冷たい出汁につけて食べると、そのコントラストが絶妙で、何個でも食べられてしまいます。タコのプリプリとした食感もアクセントになり、シンプルながらも奥深い味わいです。
2. いかなごのくぎ煮

文化的・歴史的な背景
いかなごのくぎ煮は、瀬戸内海沿岸、特に兵庫県で春先に獲れる小さな魚「いかなご」を、醤油、みりん、生姜などで甘辛く煮詰めたものです。その歴史は古く、江戸時代にはすでに存在していたと言われています。漁獲量が限られる春先の貴重な食材を、長く保存するために考えられた調理法です。
煮上がったいかなごの形が、錆びた釘に似ていることから「くぎ煮」と呼ばれるようになりました。各家庭や地域によって味付けが異なり、まさに「おふくろの味」として親しまれています。
レシピ
材料
- いかなご(生):500g
- 醤油:100ml
- みりん:100ml
- 酒:大さじ3
- 砂糖:大さじ3~4 (お好みで調整)
- 生姜:ひとかけ (薄切り)
- 実山椒(あれば):少々
作り方
- いかなごは、丁寧に水洗いし、ザルにあげて水気を切ります。
- 鍋に醤油、みりん、酒、砂糖、生姜を入れ、中火にかけます。
- 煮汁が沸騰したら、いかなごを入れます。
- 落とし蓋をし、焦げ付かないように時々混ぜながら、煮汁がほとんどなくなるまで煮詰めます。
- 仕上げに実山椒があれば加えます。
- 粗熱を取り、保存容器に移します。
一般の人が作る場合のコツ
- いかなごは鮮度が命です。できるだけ新鮮なものを選びましょう。
- 煮る際は、焦げ付かないように火加減を調整し、目を離さないようにしましょう。
- 落とし蓋をすることで、煮汁が全体に равномерно 行き渡り、味が均一に仕上がります。
- 砂糖の量はお好みで調整してください。甘めが好きな方は多めに、控えめが好きな方は少なめに。
- 生姜は、風味付けに欠かせません。たっぷりと使うと美味しくなります。
地元での食べ方
いかなごのくぎ煮は、兵庫県では春の食卓に欠かせない一品です。ご飯のお供としてはもちろん、お弁当のおかず、お茶請け、お酒の肴としても親しまれています。新子(しんこ)と呼ばれる稚魚の時期のいかなごを使うものが特に珍重されます。
おすすめの店 (というよりは購入場所)
- 明石浦漁港周辺の鮮魚店:新鮮ないかなごが手に入ります。
- 神戸・明石のデパートやスーパー:自家製のくぎ煮が販売されています。
- インターネット通販:兵庫県産のくぎ煮を取り扱うショップも多数あります。
食レポ
いかなごのくぎ煮は、甘辛い醤油の風味と生姜の香りが食欲をそそる、ご飯が何杯でも食べられる一品です。小さな魚ながらも、凝縮された旨味が口の中に広がります。春の訪れを感じさせる、兵庫県ならではの味わいです。
3. ぼっかけ (すじこん)

文化的・歴史的な背景
ぼっかけは、神戸市長田区を中心に、下町で古くから親しまれてきた庶民の味です。牛すじ肉とこんにゃくを甘辛く煮込んだもので、「すじこん」とも呼ばれます。そのルーツは、戦後の食糧難の時代に、安価で手に入りやすかった牛すじ肉とこんにゃくを、工夫して美味しく食べようとしたことから始まったと言われています。
「ぼっかけ」という名前の由来は、「ぶっかける」という方言からきているという説や、調理する際に「ぼっかけぼっかけ」と音がするからという説などがあります。お好み焼きやそばめしなど、長田区の他のご当地グルメとも相性が良く、一緒に提供されることも多いです。
レシピ
材料
- 牛すじ肉:300g
- こんにゃく:1枚
- だし汁:500ml (昆布とかつお節)
- 醤油:大さじ4
- みりん:大さじ3
- 酒:大さじ2
- 砂糖:大さじ2
- 生姜:ひとかけ (薄切り)
- ネギの青い部分:少々 (臭み取り用)
作り方
- 牛すじ肉は、たっぷりの水で下茹でします。沸騰したらアクを取り除き、ネギの青い部分と生姜の薄切りを加えて1時間ほど煮込みます。
- 茹で上がった牛すじ肉は、食べやすい大きさに切ります。茹で汁は漉しておきます。
- こんにゃくは、アク抜きのために下茹でし、食べやすい大きさに手でちぎるか、ねじりこんにゃくにします。
- 鍋に牛すじの茹で汁、醤油、みりん、酒、砂糖、生姜を入れ、中火にかけます。
- 煮汁が沸騰したら、牛すじ肉とこんにゃくを加えます。
- 落とし蓋をし、焦げ付かないように時々混ぜながら、煮汁がほとんどなくなるまで煮詰めます。
- 器に盛り付け、お好みで刻みネギや七味唐辛子をかけます。
一般の人が作る場合のコツ
- 牛すじ肉は、丁寧に下茹ですることで、臭みが取れ、柔らかく仕上がります。
- こんにゃくは、手でちぎることで味が染み込みやすくなります。
- 煮汁の量は、材料の量に合わせて調整してください。
- 砂糖の量はお好みで調整してください。
- 長時間煮込むことで、牛すじ肉がとろけるように柔らかくなり、味が染み込みます。
地元での食べ方
ぼっかけは、長田区の食堂やお好み焼き店などで、ご飯のおかずとして、またお酒の肴として親しまれています。お好み焼きやそばめしにトッピングしたり、うどんにかけたりするのも地元ならではの食べ方です。
おすすめの店
- 「高速神戸駅 メトロ食堂街」内の各店舗:昔ながらのぼっかけが味わえる店がいくつかあります。
- 長田区のお好み焼き店:ぼっかけをトッピングしたメニューを提供している店が多いです。
- 「神戸牛丼 広重」:牛丼と一緒にぼっかけも楽しめます。
食レポ
ぼっかけは、とろとろになるまでじっくり煮込まれた牛すじ肉と、味が染み込んだこんにゃくの組み合わせが絶妙な、庶民的ながらも奥深い味わいの一品です。甘辛いタレが食欲をそそり、ご飯との相性も抜群です。どこか懐かしい、ほっとする味わいです。