徳島県の代表的な郷土料理を3つご紹介します。それぞれの郷土料理について、文化的・歴史的な背景、レシピ、一般の人が作る場合のコツ、地元での食べ方、おすすめの店、食レポ的な説明をまとめました。
1. 阿波尾鶏の阿波踊り焼き

文化的・歴史的な背景
阿波尾鶏は、徳島県が誇るブランド鶏で、その名の通り、阿波踊りのように力強く、そして優雅な肉質が特徴です。地鶏ならではのコクと適度な歯ごたえ、そしてジューシーさが魅力です。「阿波踊り焼き」は、この阿波尾鶏を豪快に焼き上げた料理で、県内の飲食店などで広く提供されています。特定の起源というよりは、阿波尾鶏の美味しさを最大限に引き出す調理法として自然発生的に広まったと考えられます。阿波踊りの活気と阿波尾鶏の力強さを重ね合わせたネーミングも印象的です。
レシピ
- 阿波尾鶏のもも肉またはむね肉(骨付きがおすすめ)を用意します。
- 塩、胡椒、おろしニンニク、おろし生姜などで下味をつけ、30分ほど置きます。
- 魚焼きグリル、オーブン、または炭火などで、皮目がパリッとなるまでじっくりと焼き上げます。
- 火が通っているか確認し、焼き色がついたら完成です。
- お好みで、レモンや徳島特産のすだちを絞っていただきます。
一般の人が作る場合のコツ
- 骨付き肉を使うと、よりジューシーに仕上がります。
- 焼く前にしっかりと下味をつけることで、鶏肉本来の旨味を引き立てます。
- 皮目をしっかりと焼くことで、香ばしさとパリッとした食感が楽しめます。
- 火力を調整しながら、焦げ付かないようにじっくりと焼きましょう。
- 竹串などを刺して、透明な肉汁が出れば火が通っています。
地元での食べ方
阿波尾鶏の阿波踊り焼きは、県内の居酒屋、焼鳥店、阿波尾鶏専門店などで定番メニューとして提供されています。ビールや日本酒との相性も抜群で、宴会などでもよく注文されます。また、家庭でも手軽に調理できるため、食卓に登場することも多いです。
おすすめの店
- 「坐 とりじろう」:徳島駅と阿波富田駅からほど近い場所にある、阿波尾鶏専門の居酒屋です。新鮮な阿波尾鶏を使った焼き鳥をはじめ、様々な鶏料理が楽しめます。
- 「鳥焼処 鳥ぼん 本店」:徳島駅から徒歩数分の場所にある、阿波尾鶏にこだわった焼き鳥店です。阿波尾鶏の串焼きやもも焼きなど、シンプルながらも素材の味を生かした料理が魅力です。
- 「阿波尾鶏指定料理店 紺屋町よしこの」:徳島の歓楽街に位置するお店で、阿波尾鶏を使った様々な料理を提供しています。特に、徳島ならではの甘めのタレで焼き上げた「阿波尾鶏・骨付きもも焼き」は絶品です。
食レポ
阿波尾鶏の阿波踊り焼きは、一口食べるとその力強い旨味が口いっぱいに広がる、まさに阿波踊りのような躍動感あふれる一品です。皮はパリッと香ばしく、中はジューシーで適度な歯ごたえがあり、噛むほどに鶏肉本来のコクと風味が溢れ出します。レモンやすだちを絞ると、爽やかな酸味が加わり、さらに食欲をそそります。ビールとの相性も抜群で、ついつい飲みすぎ注意です!
2. 祖谷そば(いやそば)

文化的・歴史的な背景
祖谷そばは、徳島県西部の山間地域、秘境として知られる祖谷地方に伝わる郷土そばです。険しい地形のため米の栽培が難しく、代わりにそばが栽培されてきた歴史があります。そのため、祖谷ではそばが重要な食文化として根付いてきました。一般的なそばに比べて太くて短いのが特徴で、力強い風味と独特の食感があります。これは、祖谷の土地で育ったそば粉と、手打ちにこだわってきた製法によるものです。
レシピ
- そば粉(できれば祖谷在来種)とつなぎの小麦粉を8:2または7:3の割合で混ぜ合わせます。
- 水を少しずつ加えながら、耳たぶくらいの硬さになるまでよくこねます。
- 生地を丸めてから平らに伸ばし、均一な厚さにします。
- 包丁で、太くて短く切ります(約1cm幅、10cm程度の長さが目安)。
- たっぷりの熱湯で茹で、浮き上がってから2~3分茹でます。
- 冷水でしっかりと洗い、ぬめりを取り除きます。
- だし汁(いりこだしが一般的)、醤油、みりんなどで作ったつゆにつけていただきます。
- 薬味には、ネギ、わさび、大根おろしなどが合います。
一般の人が作る場合のコツ
- そば粉の種類によって加える水の量が異なるので、様子を見ながら調整しましょう。
- 生地をこねる際は、しっかりと力を入れて均一になるように心がけましょう。
- 生地を伸ばす際は、厚さが均一になるように注意しましょう。
- 切る際は、太さと長さを揃えるときれいに仕上がります。
- 茹ですぎると風味が損なわれるので、茹で時間は守りましょう。
- 冷水で洗う際は、しっかりとぬめりを取り除くことが重要です。
地元での食べ方
祖谷そばは、祖谷地方のそば店で提供されています。温かいかけそばや、冷たいざるそばで食べるのが一般的です。地元では、山菜の天ぷらなどと一緒に食べるのも人気があります。また、祖谷の湧き水で茹でられたそばは、格別な風味があります。
おすすめの店
- 「祖谷そば処 かずら橋夢舞台店」:かずら橋の近くにあり、観光客にも人気です。祖谷の景色を眺めながら本格的な祖谷そばを味わえます。
- 「祖谷そば もみじ亭」:築200年の古民家で、囲炉裏のある座敷席や景色を楽しめるテラス席で祖谷そばを味わえます。温かいそばはふわふわ、冷たいそばはコシがあり、手打ちならではの不揃いな麺の食感も楽しめます。
- 「総本家橋本」:明治創業の老舗。徳島県産のそば粉を使用し、伝統の製法を守り続けています。大谷焼の器で提供されるのも特徴です。そば米を使った雑炊も人気があります。
食レポ
祖谷そばは、一般的なそばとは一線を画す、野趣あふれる力強い風味が特徴です。太くて短い麺は、口の中でワシワシとした独特の食感を生み出し、噛むほどにそば本来の香りが広がります。いりこだしをベースにした素朴なつゆとの相性も抜群で、薬味のネギやわさびが風味を引き締めます。都会の洗練されたそばとは異なる、大地の恵みを感じさせる、素朴で力強い味わいです。
3. でこまわし

文化的・歴史的な背景
でこまわしは、祖谷地方に伝わる保存食で、囲炉裏の火端(方言で「でこ」)で焼いて食べることからこの名がつきました。もともとは、豆腐やこんにゃく、じゃがいもなどを串に刺し、味噌を塗って焼いたシンプルな料理でしたが、現在では祖谷地方の郷土料理として、観光客にも人気があります。囲炉裏を囲んで焼くという調理法が、祖谷の生活文化を今に伝える貴重な食文化遺産と言えるでしょう。
レシピ
- 木綿豆腐は水切りをし、厚切りにします。
- こんにゃくは下茹でし、食べやすい大きさに切ります。
- じゃがいもは皮付きのまま茹で、食べやすい大きさに切ります。
- 豆腐、こんにゃく、じゃがいもをそれぞれ串に刺します。
- 味噌だれを作ります。味噌、みりん、砂糖、酒などを混ぜ合わせます。お好みで、クルミやゴマなどを加えても美味しいです。
- 串に刺した豆腐、こんにゃく、じゃがいもに味噌だれを塗り、囲炉裏の火端、または魚焼きグリルなどでじっくりと焼き色がつくまで焼きます。
一般の人が作る場合のコツ
- 豆腐はしっかりと水切りをすることで、焼いたときに崩れにくくなります。
- こんにゃくは下茹ですることで、臭みが取れます。
- じゃがいもは、完全に火を通してから串に刺しましょう。
- 味噌だれは、焦げ付きやすいので、火加減を見ながらじっくりと焼きましょう。
- 焦げ付かないように、時々ハケなどで味噌だれを塗り重ねながら焼くと、風味が増します。
地元での食べ方
でこまわしは、祖谷地方の民宿や食事処で、囲炉裏を囲んで提供されることが多いです。熱々のでこまわしを、味噌だれにつけながら食べるのが一般的です。山菜料理などと一緒に味わうのもおすすめです。
おすすめの店
- 「清流のそば処 祖谷美人」:祖谷温泉にある食事処で、美しい渓谷を眺めながら食事ができます。こちらのでこまわしは、そば団子、豆腐、こんにゃくが串に刺してあり、自家製の柚子味噌が香ばしい一品です。温泉と合わせてゆっくりと過ごすのも良いでしょう。
- 「祖谷そば もみじ亭」:祖谷そばが自慢のお店ですが、でこまわしも人気があります。丁寧に焼き上げられたでこまわしは、味噌の風味が豊かで、そばとの相性も抜群です。窓から見える景色も魅力の一つです。
食レポ
でこまわしは、囲炉裏でじっくりと焼かれた香ばしさが食欲をそそる、素朴ながらも滋味深い味わいの郷土料理です。味噌の甘辛い風味が、豆腐、こんにゃく、じゃがいもそれぞれの素材の味を引き立てます。熱々を頬張ると、体の芯から温まり、どこか懐かしい気持ちになります。特に、囲炉裏を囲んで食べる体験は、祖谷の風土と文化を感じさせてくれる、忘れられない思い出となるでしょう。