山梨県の郷土料理

各地の郷土料理

山梨県の代表的な郷土料理を3つご紹介します。それぞれの郷土料理について、文化的・歴史的な背景、レシピ、一般の人が作る場合のコツ、地元での食べ方、おすすめの店、食レポ的な説明をまとめました。

1. ほうとう

文化的・歴史的な背景

ほうとうは、山梨県を代表する郷土料理で、平打ちの太い麺と、カボチャをはじめとする季節の野菜、きのこなどを味噌仕立ての汁で煮込んだ鍋料理です。その起源は古く、戦国時代の武将・武田信玄が陣中食として考案したという説が有力です。信玄は、農民たちが米の代わりに栽培していた麦を麺にし、野菜と一緒に煮込んで兵士に与えたとされています。栄養価が高く、体を温めるほうとうは、厳しい戦を乗り切るための重要な糧でした。

江戸時代以降、ほうとうは山梨の農村部を中心に広く食されるようになり、各家庭や地域によって具材や味噌の種類、隠し味などが異なり、独自の味が育まれてきました。現在では、山梨県民にとって日常的な食事であり、観光客にも人気の名物料理となっています。

レシピ

  1. 麺の準備: 小麦粉に塩少々と水を加え、よくこねて生地を作ります。耳たぶくらいの硬さになったら丸めて濡れ布巾をかけ、30分ほど寝かせます。寝かせた生地を厚さ3mm程度に伸ばし、幅広に切ります。
  2. 野菜の準備: カボチャは種とワタを取り除き、食べやすい大きさに切ります。大根、人参は短冊切り、白菜はざく切り、ごぼうはささがきにして水にさらします。きのこ類(しめじ、えのき、舞茸など)は石づきを取り、食べやすい大きさにほぐします。油揚げは油抜きをして短冊切りにします。豚肉または鶏肉(お好みで)は一口大に切ります。
  3. 煮込み: 鍋にだし汁(昆布とかつお節、または煮干しなど)を沸かし、ごぼう、大根、人参、豚肉または鶏肉を加えて煮ます。アクが出たら丁寧に取り除きます。
  4. カボチャ、白菜、きのこ類、油揚げ、平打ち麺を加えます。麺が煮崩れないように注意しながら、野菜が柔らかくなるまで煮込みます。
  5. 味噌を溶き入れ、味を調えます。味噌の種類はお好みですが、山梨県産の甲州味噌を使うと風味が豊かになります。
  6. 仕上げに、お好みでネギの小口切りや七味唐辛子を添えていただきます。

一般の人が作る場合のコツ

  • 麺は、手打ちが難しい場合は市販のほうとう麺を使用しても美味しく作れます。
  • カボチャは、煮込むと溶けやすいので、他の野菜より少し遅れて加えるのがおすすめです。
  • 味噌は、最後に溶き入れることで風味が損なわれません。
  • 隠し味に、少量の砂糖やみりんを加えると、まろやかな味わいになります。
  • 鶏肉や豚肉の代わりに、油揚げを多めにしても美味しくいただけます。

地元での食べ方

ほうとうは、熱々の状態でそのまま食べるのが一般的です。家庭では、土鍋で煮込みながら食卓を囲むこともあります。お好みで、七味唐辛子や薬味ネギを加えて風味を変えながら楽しみます。また、ご飯と一緒に食べる人もいます。

おすすめの店

  • 「小作」:山梨県内に複数店舗を展開するほうとう専門店。豊富な種類のほうとうが楽しめます。
  • 「不動茶屋」:河口湖畔に位置し、囲炉裏のある趣のある店内で味わうほうとうは格別です。
  • 「奥藤本店 甲府駅前店」:創業100年以上の老舗。伝統の味を守り続けています。

食レポ

ほうとうは、平打ちの太麺がモチモチとした食感で、食べ応え満点です。カボチャの甘みが溶け込んだ味噌仕立ての汁は、濃厚で滋味深く、体の芯から温まります。様々な野菜やきのこの旨みも加わり、栄養満点の一品です。特に、寒い季節にハフハフ言いながら食べるほうとうは、格別な美味しさです。

2. 甲州鳥もつ煮

文化的・歴史的な背景

甲州鳥もつ煮は、山梨県甲府市を中心とした地域で愛される郷土料理で、鶏の砂肝、ハツ、レバー、キンカンなどのもつを、甘辛い醤油ベースのタレで照り煮にしたものです。その起源は、昭和30年代頃、甲府市内の蕎麦屋さんが、蕎麦の付け合わせとして考案したのが始まりと言われています。

当時は、鶏肉は高級品でしたが、比較的安価に入手できた鶏もつを美味しく食べられるように工夫した結果、この料理が誕生しました。独特の甘辛い濃厚な味わいが評判を呼び、蕎麦屋だけでなく、一般家庭や居酒屋にも広まり、今では山梨を代表するB級グルメとして知られています。

レシピ

  1. 鶏もつ(砂肝、ハツ、レバー、キンカンなど)は、丁寧に水洗いし、下処理をします。砂肝は銀皮を取り除き、火が通りやすいように切り込みを入れます。レバーは血合いを取り除き、一口大に切ります。ハツは縦半分に切ります。キンカンはそのまま使います。
  2. 鍋に、醤油、みりん、砂糖、酒を入れ、火にかけます。砂糖が溶けたら、鶏もつを加えます。
  3. 落とし蓋をし、中火でじっくりと煮込みます。焦げ付かないように時々混ぜ合わせます。
  4. 煮汁が少なくなり、もつに照りが出てきたら火を止めます。
  5. 器に盛り付け、お好みで刻みネギや粉山椒を添えていただきます。

一般の人が作る場合のコツ

  • 鶏もつは、新鮮なものを使うのが一番ですが、冷凍ものを使う場合は、しっかりと解凍してから調理しましょう。
  • 下処理を丁寧に行うことで、臭みが軽減されます。特にレバーは、牛乳に浸けておくと臭みが抜けやすくなります。
  • 煮込む際は、焦げ付かないように火加減を調整し、時々混ぜ合わせることが重要です。
  • タレの甘さや濃さは、お好みで調整してください。
  • 火を通しすぎると、もつが硬くなるので、注意しましょう。

地元での食べ方

甲州鳥もつ煮は、蕎麦屋の付け合わせとしてはもちろん、居酒屋の定番メニューとしても親しまれています。ビールや日本酒との相性も抜群です。また、ご飯のおかずとしても美味しくいただけます。

おすすめの店

  • 「奥藤本店」:甲州鳥もつ煮発祥の店として知られています。蕎麦とのセットが人気です。
  • 「鳥もつ専門店 ぼんち」:様々な種類の鳥もつ料理が楽しめます。
  • 「甲府鳥もつ横丁」:甲府駅周辺には、鳥もつ煮を提供する店が集まる横丁があります。

食レポ

甲州鳥もつ煮は、鶏もつの様々な部位の食感が楽しめ、濃厚で甘辛いタレが絶妙に絡み合って、後を引く美味しさです。特に、キンカンのとろけるような食感と、濃厚な黄身の味わいがアクセントになっています。ビールや日本酒のお供にはもちろん、ご飯もついつい進んでしまう一品です。

3. あわびの煮貝

文化的・歴史的な背景

あわびの煮貝は、山梨県を代表する高級珍味で、生のあわびを醤油ベースのタレでじっくりと煮込んだものです。海のない山梨県で、なぜあわびが名産品となったのかには、独特の歴史的背景があります。

江戸時代、駿河湾(現在の静岡県)で獲れたあわびは、塩漬けにされて「塩鮑(えんぽう)」として甲州街道を通って甲府へと運ばれました。この塩鮑は、武士への献上品や贈答品として珍重されましたが、塩辛く硬いため、そのまま食べるには適していませんでした。そこで、甲府の商家が、この塩鮑を酒や醤油などでじっくりと煮込むことで、柔らかく風味豊かな煮貝として生まれ変わらせたと言われています。

海のない山梨で生まれたあわびの煮貝は、その希少性と独特の製法から、高級贈答品として広く知られるようになり、現在でも山梨を代表する特産品の一つとなっています。

レシピ

  1. 生のあわびは、殻から外し、内臓を取り除き、丁寧に水洗いします。
  2. 鍋に、醤油、みりん、酒、砂糖、あわびの煮汁(あれば)を入れ、火にかけます。
  3. 沸騰したらあわびを入れ、落とし蓋をして弱火でじっくりと煮込みます。煮汁が常にひたひたになるように調整します。
  4. あわびが柔らかくなり、煮汁がとろりとして照りが出てきたら火を止め、そのまま冷まします。
  5. 冷めたら薄くスライスし、器に盛り付けます。煮汁も添えていただきます。

一般の人が作る場合のコツ

  • 新鮮なあわびを使うのが一番ですが、入手が難しい場合は、冷凍あわびを使用しても良いでしょう。その際は、しっかりと解凍してから調理してください。
  • 煮込む際は、焦げ付かないように火加減を調整し、煮汁が常にひたひたになるように注意しましょう。
  • 煮込み時間は、あわびの大きさや種類によって調整してください。竹串がスーッと通るくらいが目安です。
  • 煮汁は、旨みがたっぷり出ているので、捨てずにタレとして活用しましょう。
  • 薄くスライスする際は、包丁をよく研いで、丁寧に切ると、見た目も美しく仕上がります。

地元での食べ方

あわびの煮貝は、そのまま薄切りにして、お酒の肴やご飯のお供として味わうのが一般的です。贈答品としても人気が高く、お中元やお歳暮などによく用いられます。

おすすめの店

  • 「みな与」:創業100年以上の老舗。伝統の製法を守り続けています。
  • 「かいや」:あわびの煮貝をはじめ、様々な海産物加工品を販売しています。
  • 「山梨県内の土産物店」:多くのお土産物店であわびの煮貝を取り扱っています。

食レポ

あわびの煮貝は、口に入れた瞬間に広がる磯の香りと、奥深い旨みが特徴です。じっくりと煮込まれたあわびは、柔らかく、噛むほどに上品な甘みが広がります。濃厚な煮汁もまた絶品で、お酒の肴にはもちろん、ご飯にかけても美味しくいただけます。高級感あふれる味わいは、まさに山梨を代表する珍味と言えるでしょう。

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